第36話 敵の専務が元カレだった件

「うーん…」

由利亜がデスクにファンシー銃を置いて唸っていたので尋ねてみた。

「どうしたの?」

「あ、真理亜。実は、今までは少額だし気にせず撃てていたのですが、お給料と同額程度の費用が掛かるとなると気軽に撃てなくなってしまって……」

「私の給料少額って言った???」

「あっ、いえ、私も今は低賃金で生活していますし!」

「ここ、そこそこ給料いいよ???」

「えっ!?」

由利亜が心底驚いた顔をした。

こらだからセレブは!これだからセレブは!!

「私みたいに力技で戦う?技術開発部のスモークさんにお願いしてお揃いのグローブしちゃう?」

「それはちょっと……」

由利亜が首を横に振った。

「我儘だなぁ!もう!」

「真理亜みたいなコブラツイスト、私には出来ませんよ」

にっこり言われるけど私なんてストレス発散に自我流でやってるだけだからプロには負けるし。そんな恐れた目で見られても…。

私が自分の握力と力技に疑問を持つと、けたましい警報音が鳴り響いた。

敵のお出ましだ!やってやる!!プロには負けるってところ、見せてやる!!

……いや、魔法少女的には敵に勝たなきゃだね!

急いで走って辿り着く頃には息切れしてそこら辺の雑魚敵をやっつける。

やっぱり力技が戦ってるって感じして最高〜!

私が性癖を開きそうになっていると、敵側から煙が焚かれ中からイケメンが現れた!

「僕は新しく幹部の専務になった佐藤。以後、お見知りおきを」

イケメンが現れた!大事なことなので二度言おう!

だけどこのイケメンは単なる顔だけである…。

何故そんなことを知っているかと言うと元カレだからである!

えっ!?まじで?私が魔法少女やって元カレが敵の幹部やるなんてまんま少女漫画じゃない?

まぁ、最後にコブラツイストをキメて佐藤母から訴訟起こされそうになって別れたんだけど。

引越しから何からしてバックれたんだけど。

……正体がバレたらまずい。訴訟が待っている。

そんな昔のことを思い出していると佐藤が近付いて来た。

「君は僕の忘れられない人に似ているね」

佐藤が私の手を取りながら気色の悪い事を言ってくる。

考えて欲しい。

いくらイケメンといえど三十五歳と小中学生の美少女だ。

捕まるぞ、佐藤。

「ん?……いや、本当に似ているな?でも年齢が違いすぎる……」

やばい!正体がバレる!訴訟!!

「オンドリャッシャーーー!!!」

私は渾身のアッパーを佐藤にかまして黙らせた。

そのまま後方に勢いよく飛んでいったが知らねー。多分生命力はあるから生きている。

現にスーツに汚れすら付かさず起き上がった。

すげーな。ハイブランドスーツ。土埃すら付かせない。洗剤要らずだね!

「この不都合な事は言わせないという熱意を感じるアッパー…!間違いない!君は真理亜だ!」

くっ、まさか都合が悪い事を言わせないように込めた私の渾身のアッパーで身バレするなんて…!

「なんのことか、リア分かんなーい!テヘペロ」

「その雑な誤魔化し方!間違いない!」

おかしい…誤魔化そうとすればする程確信を持たれる。

「聞いてくれて!真理亜!あれは浮気じゃないんだ!」

「テッペン過ぎてまでホテルのラウンジで二人っきりでお酒飲んで上に部屋まで取っていて何を言ってるんだ!!ふざけんな!!去勢すっぞ!!」

「美しい女性がいたら話し掛ける。礼儀じゃないか!部屋は仕事のために取ってあったシングルで僕が一人で泊まる用だよ!」

「何が礼儀だアホンダラー!」

あの時のムカつきが思い出されて冷静でいられない。

「ちくしょー!覚えてろよー!」

「リアさーん!それ、悪役が言うセリフですー!」

ユリアの突っ込みが木霊しつつ私は元カレ佐藤太郎から敗走してしまった。

次は潰す!!!

「だから悪役のセリフですってばー!」

私の心の声がユリアに聞こえていたみたい!

みんなは顔が良くてお金持ちでもマザコンナルシストクソヤローになんて引っ掛からないようにね☆

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