第18話 外出準備(4) ~エアライフルの仕様を考えながら

 どんな道具であれ、0から創造するのは難しい。

 だからエアライフルについても、実際の製品をたたき台にして考えるつもりだ。


 まずはエアライフルについての本を読むところからスタート。

 日本の法律関係は今回は関係ないのでパス。

 ふむふむ、基本的には鳥等の中小の対象を狙い撃ちするタイプの銃なのか。

 猪や鹿のような大型狩猟獣は急所に当てないと倒すのは難しいと。


 ただ、僕が考えている主な用途は猿等を追い払う事だ。

 狙って倒すならExtエクステンディッド-UQ《ユビキタス》で電撃を喰らわせればいい。


 今までの世界樹ユグドラシルからの提供物資を見ると、ある程度はこちらの要求をくみ取って改造というかオリジナル仕様にしてくれそうだ。


 ただあまり無茶な仕様にするとバランスが崩れるだろう。

 壊れた時とか整備をする時も大変だ。

 だからとりあえず、最初は純正プラスアルファ程度の性能で。


 ベースにするエアライフルは何がいいだろう。

 世界のエアライフル紹介のページをパラパラめくってみる。


 良さそうな物があった。

 最初から連射可能で、標準で弾が20発近く入るというモデルだ。


 全長90cm、重さ4kgと結構ごつい。

 でもこの辺は少し世界樹ユグドラシルに設計変更して貰えばいいだろう。

 これをベースに考えていこう。 


 まずエアライフルの口径はどのくらいにしようか。

 弾が小さい程、弾速は速くなるが威力は低くなり、遠くへ飛ばなくなる。


 弾の大きさというかエアライフルの口径で一般的なのは4.5mm(17口径)、5.5mm(22口径)、6.35mm(25口径)、7.62㎜(30口径)。


 大型獣相手のメインウェポンではないが、猿くらいは当たれば仕留められないと困る。

 ただし弾が大きすぎると装弾数が減るし、弾速も遅くなる。

 となると弾の大きさは6.35mmか。


 装弾数は日本仕様なら法律で5発まで。

 でもベースとして考えているエアライフルは6.35mmの弾なら標準で19発装填可能。

 とりあえずはこれでいいだろう。

 予備弾倉も勿論つけて貰うとして。


 セミオートフルオート切替は標準でついている。

 エアタンクも標準の580cc1つでいいだろう。

 これでも一般的なエアライフルと比べると充分多い。

 エアタンク内の空気圧が低くなってもExtエクステンディッド-UQ《ユビキタス》でその場で補充できるし。


 長さはとりあえず標準で。

 いや、威力と集弾性が落ちる事覚悟で短くしてもいい。

 その方が取り回しが楽になるし。


 サイトは遠距離狙撃なんてしないから3~12倍の純正スコープでいいだろう。

 僕の使用目的ならドットサイトの方が便利だろうけれど、あれは電池が必要だし。


 弾の素材は特性的には鉛がベスト。

 しかし毒性を考えるとそれ以外の材料にしたい。

 でもそうすると弾は軽くなってしまうだろうか。

 でもまあ、猿を追い払う為だからそこそこの重さでいいか。

 形状はスラッグ弾かディアボロ型どちらがいいか。


 そう言えばエリやマキはどうしているだろう。

 横目で見てみる。

 予想通り、何もしていない状態だ。


 自主性に任せて放っておくのが正しいのかもしれない。

 ただ、どうにも不自然な感じがしてしまう。

 だからつい、声をかけてしまった。


「エリやマキは、今みたいな何もない時は、何をしているというか、どういう状態なんですか?」


「ハルトの指示を待っています」


 エリの回答だ。

 なおマキは何も言わない。

 雰囲気的に同一回答で、エリが代表して答えたという感じだ。


「指示があったらこっちから言います。ですからそれまで自由にしていて下さい。この場合の自由とは、自分にとって楽な、あるいは自分がしたいという意味です」


「わかりました」


 これもエリが回答した。

 さて、今僕が言った指示で何か変わるだろうか。

 そう思って横目で見る。


 変わらない。

 相変わらずテーブルの向かい側で、何もせず僕の方を見ているだけだ。


 これが自由にしている状態なのだろう。

 僕の指示に従っているとすれば。


 気になる、問いただしたい。

 でもそうしたら、同じ台詞を繰り返してしまいそうな気がする。

 

 今は気にしないで、エアライフルの仕様策定の方に集中しよう。

 なまじ2人とも綺麗だし可愛いから気が散るけれど。

 本に目を通しながら横目で2人の方を見る。

 やっぱり何もしないで僕の方を見ている。


 この状況では集中するのは無理だ。

 そう僕は悟った。

 仕方ない。


「自室で本を読みながらエアライフルの仕様を考えてきます。2時間くらいで描き終わると思います。

 描き終わって、提供を御願いするまでこの部屋で自由にしていて下さい。外出してもかまいませんし、この居住スペースにある物は自由に使って構いませんから」


「わかりました」


「わかりました」


 相変わらずの返答にそれでも頷いて、僕は個室へ。

 僕が個室へ行った後も2人は同じようにしているような気がする。

 だから根本的な解決にはならない。

 そうはわかっているけれど、やっぱり視線が気になるから。


 それでは本の続きを読むとしよう。

 大雑把に考えたこの仕様でいいか、実例をイメージしながら考える為に。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る