第22話 エルフ編

真っ白な白髪にブルーの瞳、ツリ目がちな大きな目。


ツンと上に尖った耳とスっと通った鼻筋、そして何より光に反射してしまうのでは無いかと言うほど真っ白な肌。


間違いない、The エルフ って感じだ。


見たところ5、6歳くらいの少女なので、きっと大人になったらとんでもない美人になるだろう。


「アレン、話きいてたかや?」


アンに咎められて、俺は思考を止める。


「もちろん聞いてたさ、エルフの森がピンチなんだろ」


エルフの少女は真剣な顔でゆっくりと頷く。


「左様でございます。我々エルフはここ数十年、未曾有の危機に陥っております。ワタクシの勝手な判断ではありますが、皆様はかなりの実力者であるとお見受けしております。ですので是非我々を救って頂けないでしょうか?」


深々と頭を下げるエルフ美少女。


見た目5、6歳くらいの子がこんな丁寧な口調で話をしていることに驚きを隠せないが、それよりも見ず知らずの俺たちなんかに助けを求めていること、それほど深刻な状況であることの方が驚きだ。


「エルフの森って、本で読んだ限りだと相当栄えてるって感じだったけどな」


エルフ美少女はグッと口の回りに力を込め、暫く押し黙る。


「……そうですね。栄えていました」


「どうして、ピンチになっちゃったのよ?」


今まで黙って聞いていたレネも痺れを切らして口を挟む。


「それは―― 直接お話を聞いた方がよろしいでしょう」


「直接? 誰から?」


俺の問いに、エルフ美少女はどこか覚悟を決めたような顔になる。


「皆様を女王の元にお連れします」


「エルフの女王……」


これはまた、美人っぽいワードが飛び出した……じゃなくて深刻な状況だってんだから、その女王とやらには会わなきゃな。


「君、名前なんて言うの?」


「ワタクシはニムリと申します」




ニムリの案内で俺達はエルフの町にやって来た。


エルフと言えば木の上とかに住んでんのかなとか思ってたけど、しっかりした町であった。


「ここがこの町の門なります」


門、と言っても大きな扉がある訳でもなく、神社にある鳥居の様なものが建っているだけだ。


そんなことを考えていると、ニムリはこの町の地図を俺に渡してくる。


「ここに幾つか宿があるので、今日はそこに泊まって下さい。明日の明朝、迎えに行きますので共に女王の元へ向かいましょう」


「ん? ニムリは町には入らないの?」


レネは俺とアンも考えていたことを問いかける。


「ワタクシは………… まだ他にやることがございますので、森へ帰ります」


ニムリが笑顔でそう言った時、俺はニムリの手が少し震えているのを見逃さなかった。見逃せなかった。





エルフの町の宿って行っても内装は人間のとこと変わらない。 過ごしやすいもんだ。


男組と女子組で部屋を別れた後、俺はベッドに綺麗なダイブをかます。


「はぁ……………… めちゃくちゃ歓迎されたな」


ニムリの話だとここ数年人間がここに訪れたことはないって話だったが、エルフの人達はまるで俺たちが来るのを知っていたかのように歓迎してくれた。


――でも、きっとアンは気付いていたと思うが、エルフ達の魔力が想像よりもとても弱々しいものだった。


本で読んだ限りだとエルフは世界でも有数の魔法に長けた種族だって話だったけどなぁ。


そんなことを考えているといつの間にか眠ってしまったようで起きた時には、すっかり夜になっていた。


そんな折、レネが部屋のドアをノックする。


「アレン夜ご飯の用意ができたって店主さんが」



「いやぁ、済まないね。折角のお客人だってのにこんな貧相な料理しか出せなくて。ここ数十年作物が育たなくてね」


人間で言うと30歳位の見た目の(ちゃんと超美形)店主のエルフおじさんは申し訳なさそうに皿を運んでくる。


「いやいや、全然! めちゃくちゃ美味いっすよ」


俺たち誰1人、料理に不満はなかった。


こんなもんレギの料理に比べたら、A級グルメだ。


「アタシ、お金無くて雑草食べてたこともあるので、超高級料理って感じです」


レネの突然のカミングアウトにより、店内に微妙な空気が流れる。


「――あぁ! えっと作物が育たないってなにか原因はあるんですか?」


俺は話題を変える。


「あぁ、噂だが原因は女王様が病気になってる事が関係あるらしい」


「女王が、病気」


「ここ数十年、我々は女王様の姿を見ていないんだ」


なるほどねぇ。


「所で君たちはどうやってここまで来たんだい? ここ周辺の森は危険な魔物が沢山住んでるだろ?」


店主さんは俺たちが食べ終わった皿を片付け始める。


「あぁ、それならニムリが助けて――」


「アン、バカあんた――」


レネはアンの肩を掴む。


ニムリに町の中で絶対に自分の名前は出さないようにと俺たちは言われていた。


「ニムリ――」


その名前を聞いた店主さんはピタッと動きを止める。


「……どれ」


「え、なんですか?」


「部屋に戻れ!! お前たち! もうお前達とは話たくも無い!! あんな忌まわしい生き物と関わっていたとは!」


あんなに親切だった店主さんはいきなり顔を真っ赤にして怒り狂う。


突然の事で頭が追いつかない俺たちではあったが、大人しく部屋に戻ることにした。



《あとがき》


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次回は12月 21日 水曜日の20時46分に投稿します。

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