第43話 彼女持ち

日直の制度がまだしっかりと立ち上がってないからか、やはり俺と水瀬さんで教室の掃除などを軽くするが、二人でやると効率よくすぐに終わるので少し惜しい。


その空いた時間で、色々出来るとはいえ、水瀬さんとの掃除や準備の時間は心地良いし、掃除をする水瀬さんの家庭的な様子が俺のツボを刺激するので俺としても掃除が凄く捗ったりする。


「おーっす」


外の部活動の声に耳を済ませつつ、水瀬さんとゆっくりしていると、そんな挨拶と共に岡田が一番乗りしてくる。


相変わらず眠たそうだが、それにしてもまさか俺や水瀬さんを除いて最も早く来るとは思ってなくて少し驚きつつも、後ろの女子生徒を見てなるほどと納得もする。


「じゃあね、タロー。今日の帰りはちゃんと一緒に帰ってよね」

「へいへーい」

「全くもう……本当に仕方ないんだから」


やる気のない返事に呆れつつも、岡田を送り届けてからその子は自分のクラスに立ち去っていくが、間違いなく先日水瀬さんとカラオケに行った時に岡田が連れていた彼女さんその人で間違いなかった。


同じ高校だったんだ。


「岡田、さっきの子が彼女さん?」

「ん?ああ、そうそう」


眠たげにそう答える岡田だけど、俺としては近くで聞き耳を立てている水瀬さんのためにもあれこれと聞くことにする。


「確か幼なじみだったっけ?」

「まあなー。昨日もデートしたし」

「そりゃお熱いことで」

「ラブラブだからなー」


気のない声だけど、昨日の様子と先程の感じから事実なのは間違いなかった。


水瀬さんも、その手の話には興味があるのか読書のフリをしながらしっかりと聞いてるし、場合によっては『不純異性交友です!』と割り込んでくるかもだけど、その点はそこまで心配してなかった。


「この前、約束すっぽかしたから機嫌損ねてなー」

「すっぽかしの理由は?」

「大食いチャレンジのビラに引かれてちょっとな」

「なるほど、お前が悪いな」


彼女よりも食欲を優先したのだから、仕方ない。


「それと先週一緒に帰る約束忘れて、先帰ったこともあってな。ご機嫌ななめだったよ」

「優しい彼女さんじゃん。色々やってもお前にまだ愛想つかさないんだから」

「だなー、俺には勿体ないくらいだ。まあ、誰にも渡さないけど」


最後のところは、セリフだけ見れば凄くカッコイイし共感が持てるのに、机の上でだらりとしているその様子は何ともしまらない。


まあ、何れにしても、俺と水瀬さんのお出かけを目撃した件については何も言及してこないし、その辺の察しの良さは流石とも言えた。


岡田の彼女さんも、岡田のこういういった面を理解しており、好いてるのかもしれないが、その辺は聞く機会があれば聞けばいいかな。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る