第40話 ラナンキュラス

「今日はありがとうございました」


朝によく会う場所まで来ると、水瀬さんが先にお礼を言ってくる。


俺から言おうと思ってたんだんだけどなぁ……カッコ悪いけど仕方ないか。


「こちらこそ、楽しかったよ。また一緒に出掛けようね」

「……!は、はい!是非また!」


心底嬉しそうに頷いてくれる水瀬さんに、俺は微笑んでから先程花屋で買った花を手渡す。


「これはさっきの……」

「この花、気にしてたでしょ?今日のお礼にと思ってさ」


色んな花を水瀬さんは嬉しそうに見ていたけど、中でもピンクのラナンキュラスに反応してたように思えたのでそれを選んでみた。


ピンクのラナンキュラスの花言葉は『飾らない美しさ』だったかな?


赤のラナンキュラスだと『あなたは魅力に満ちている』だったはずなので、そちらを選ぼうかと思ったけど、水瀬さんの様子から花言葉的にも色的にもピンクが無難に見えてそちらにしてみた。


「わ、私、あの……男の子からお花貰ったことなくて……あの、その……」


アワアワする水瀬さんだったけど、しばらくして何とか気を落ち着けると赤くなりつつ言った。


「あ……ありがとう……ございます……」

「こちらこそ、受け取ってくれてありがとう」

「はぅ……」


照れる水瀬さんに追い打ちをかけるつもりはないけど、とりあえず言っておこうと俺は言葉を口にする。


「ちなみに、俺は花言葉的にも水瀬さんにピッタリだと思ったから選んだんだよ」


そう言うと驚いたような表情を浮かべてから、またしても赤くなってしまう。


水瀬さんもラナンキュラスの花言葉知ってるのかもしれないな。


男子の俺が知ってたのは本当にたまたまだけど、水瀬さんは図書室でその手の本をこっそり読んでても不思議は無いので、俺はその様子を思い浮かべつつ尋ねる。


「折角だし、家まで送ってこうか?」

「い、いえ!だ、大丈夫……ですぅ……」

「そっか。じゃあ、また明日ね」

「はぃ……」


そう言って照れる水瀬さんを見送るけど……まあ、時間的にもまだ大丈夫そうだし、後で無事帰れたか確認のメッセージを軽く入れておくか。


そう思いながら、水瀬さんが見えなくなると俺も歩き出す。


今日は水瀬さんとの事を色々報告出来そうだ。


収穫の多かった楽しい時間をなんて報告するか考えてから、家からほど近い場所にあるお墓にお墓参りに行ってから、俺も帰宅する。


なお、水瀬さんはちゃんと帰れたようなのでその辺は安心だけど、明日会った時までにいつも通りになるかは不明にも思えた。


明日も会えるのが楽しみだ。


何にしても、水瀬さんとのお出掛けは楽しかったし、絶対また行こうと思いながら翌日に備えて早く寝ることにしたのだった。




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