久しぶりに楽しいお昼休みを過ごしていると、ふとポケットの中のスマホがメッセージの受信を知らせる。

マナーモードなので、バイブで分かったのだけど、そこで俺はちょうど良いタイミングだと思ってスマホを取り出してから水瀬さんに聞いた。

「水瀬さん、スマホ持ってる？」

「はい。ありますよ」

「じゃあ、連絡先交換しない？」

サラリと言ったように思えるだろうけど、実は少しだけ……自分でも驚くことに、連絡先を聞くだけなのに内心、少し緊張していたりもした。

おかしいなぁ……いつもは女子相手だろうとあっさりと聞けるし、変に緊張とかしないのに、水瀬さん相手だとそうなるのだから、我ながら不思議なものだ。

まあ、そんな内心は悟らせないように俺は優しく微笑んでいたけど、逆に水瀬さんは驚いたように尋ねてくる。

「えっと、良いんですか？私と連絡先交換しても……」

「何か問題ある？」

「えっと、クラスメイトに勘違いされたりとか……蒼井くんは人気者のようですし……」

『男子が女子の連絡先を聞く＝相手に好意があるのでは？』……ということかな？

水瀬さんは真面目だし、クラスメイト達と距離があるので、そういう考えになるのかもしれないなぁ。

実際、仲の良いクラスだと男女関係なく連絡先を知ってることはままあるのだけど、まあ、俺としてはその解釈は間違ってないと思うので頷く。

「水瀬さんともっと仲良くなりたいから、水瀬さんが嫌じゃなければ教えて欲しいな」

「嫌ではないですけど……本当にいいんですか？」

「是非とも」

「えっと、じゃあ――よろしくお願いします……」

そう言って照れつつスマホを渡してくる水瀬さん。

シンプルなシルバーのスマホだけど、余計なものがないので水瀬さんらしくもあった。

「その、やり方分からなくて……蒼井くん、お願いしてもいいですか？」

なるほど、やり方が分からないからスマホを直接渡してきたのか。

「分かったよ。でも、一応やり方教えながらやるから見ててくれる？」

「はい、分かりました。ありがとうございます」

「こちらこそ、ありがとう」

そうして、連絡先の交換は無事に終わったのだが、教えてる時に水瀬さんが少し機械音痴な部分がある事を知れたのは中々に収穫だった。

本人曰く、『家電は大丈夫なんですが、パソコンとかスマホはよく分からなくて……』ということらしい。

機械音痴という部分に萌えたのは初めてかもしれないなぁ……なんてアホなことを考えるけど、ちんぷんかんぷんな水瀬さんはそれはそれで可愛いものであった。

あと、家族以外で初めての連絡先も俺のようだったのでそこも凄く嬉しい収穫で、お昼休みのあと、俺がホクホク顔を隠すのが少し大変だったのは言うまでもないだろう。

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