第18話 副委員長

「いやー、よくやる気になったなー」

「でも、向いてるかもね」

「わかるー。蒼井くん面倒見よさそうだしねー」


一時間目のホームルームが終わると、初日に仲良くなったような人達が、俺の副委員長立候補について色々言いたかったのか自然と集まってきて輪ができる。


あれこれと言うけど、皆からは感じられるのは、『面倒な役を引き受けてくれて助かる』というような感じのものだと俺は受け取っておく。


「ところで、岡田。ホームルーム中寝てなかった?」

「おう。ぐっすりと寝たから、少し元気になった」

「それは何より。でも、目を開けて寝るのは器用すぎるし不気味だからバレると思うぞ」


水瀬さんの観察なんかがメインだけど、クラスメイトの達の様子を見ることで人となりを知ることもしている俺は、一時間目のホームルーム中、その時間丸々岡田が寝ていたことも把握していたけど、その寝方が器用すぎて少し驚いたものだ。


なにせ、一見普通に座って黒板を見ているようで、目を開けて寝息を立てるというかなり不気味なものだったので、そう思うのも仕方ないだろう。


「でも、蒼井が副委員長になってくれて助かったわ」

「だよなー。だって、水瀬が委員長だろ?やってくれるのは嬉しいけど……厳しくなりそうだしなー」


そんな風に岡田の奇行について話していると、今朝注意された男子生徒のうちの二人がそんな事を言い出す。


完全に自業自得なのだが、彼らからしたら一度でもああして注意を受けると水瀬さんに対して、良い印象ではいられなかったのだろう。


それにしても……俺が水瀬さんより甘いと思ってる時点で何ともおめでたい奴らだ。


「言っとくが、俺が副委員長だからって甘くすることはないぞ?むしろ、厳しくいくからな」

「マジでかー、例えば?」

「遅刻1回につき、男子は二階堂がディープキスの刑に処す」

「よし、お前ら!毎日登校頑張るぞ!」

「「「おー!」」」


とりあえず、アホなことを言っていた連中はこれで黙らせられたので何より。


チラリと視線を向けると、水瀬さんが読書をしているフリをしてまた俺を見ていたようなので、優しく微笑んでおくと、本で顔を隠してしまった。


傍に行って、のぞき込みたい所だけど……集まってくる連中の相手もしないとだし、もどかしいものだ。


まあ、それに何より、クラスの注目が集まりやすい今のこの状態で水瀬さんに視線を集めるのは可哀想だし、お昼の時間に上手いこと連れ出せるように頑張ってみるか。


そうして短い10分間休みが終わり、二時間目、三時間目と初回の授業を過ごしていくけど、水瀬さんと話せる時間が少ないのでとりあえず後で巻き返そうと決意を固めつつ、交友関係の構築と授業に専念するのであった。





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