第11話 可愛いは正義

「あ、蒼井くん。おはようございます」


猫と戯れていると、水瀬さんが丁度よくやって来てくれた。


「わぁ、にゃんちゃんだ」


嬉しそうに近づいてくると、彼女は俺の近くに居る猫に気が付き、さらに表情を緩める。


にしても、『にゃんちゃん』か……とっさに出たあたり、猫好きなのかな?


まあ、可愛いものが好きなのは万人に通じるものだよね。


「蒼井くんの飼い猫ですか?」

「いんや。野良じゃないかな」

「そうなんですか。可愛いですね〜」


よしよしと嬉しそうに撫でる水瀬さん。


「水瀬さん猫好きなの?」

「えっと、詳しくはないんですが、可愛いので……」

「確かに、可愛いものはいいよね」


水瀬さんも加わり五分ほど猫と戯れてから、その子にお礼を言って俺と水瀬さんは並んで登校する。


「今朝も会えるとは思いませんでした」

「俺もだよ。何となく早く出ただけだったからさ」

「ふふ、あの猫さんに感謝ですね」


確かにそうかも。


水瀬さんとは違う理由だけど、あの子のお陰で自然に一緒の登校がもぎ取れたので感謝ではある。


それに……


「何だか、凄くもふもふしてる子でしたね」


嬉しそうに感想を述べる水瀬さん。


俺としては猫よりも、それを可愛がる水瀬さんを見れたのが役得だったりする。


可愛いものが可愛いものを愛でる光景というのも中々に良かった。


「水瀬さんは登校時間早いんだね。中学の時からそうなの?」

「はい。早く行って色々しておこうかと。まだ日直も決まってませんし、先生方の負担も多少は減らせるかもしれないので」


なるほど、水瀬さんらしいかな。


にしても、そこに気がつくとは……俺とは根本から違うのかもしれないなぁと思わされる。


ピュアで真面目で、優しい……うん、俺には何一つ当てはまらないからこそ、惹かれるのかもしれない。


「それに、また一緒に登校できるかもしれないですし……」


ポツリと、俺に聞こえないような声量でそんな事を呟く水瀬さん。


聞こえてないつもりかもしれないけど、残念なことに俺はそこそこ耳も良いので、聞き漏らすはずもなく、バッチリと聞こえていた。


良かった、水瀬さんも俺と登校するのを望んでいた節があるようだし、迷惑でないなら時間を合わせるくらいは大丈夫かな。


嫌がるようなら、無理強いはしたくないのであまり干渉しない方がいいのかもしれないけど、向こうが嫌でないならどんどん積極的に行くべきだろう。


自分でもびっくりするほど押しが強い気もするけど……まあ、初めての気持ちに俺も色々混乱してるのかもしれないと一応の理由付けをしてはみるけど、ただ単に水瀬さんと仲良くなりたいだけなので、深くは考えない方がいいかな。


仲良くなる以上の気持ちだろうけど、まずはしっかりと友達になっておかないとね。


そこから先は慎重に外堀を埋めて、気持ちを近づけて意識して貰えるようにしようかな。


よし、頑張ろう。








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