第6話 新たなディスク

 その後ザブさんは、のどかな山の道を歩き、他の廃屋に向かいます。

 太陽の下での調査は気持ちよさそうです。

 このディスクの映像では、他の廃屋も全部几帳面に調査をしています。

 私からすると、ただダラダラとつまらない退屈な時間が過ぎていくだけでした。


 そして、日が暮れてからの映像になります。


「ふふふ、夜の廃村は薄気味悪いですねー」


 ザブさんが暗い廃村の前でコメントを入れています。

 配信映像では全てカットされています。

 その後の映像で気になる所はしばらく出て来ませんでした。


 映像が三軒目の廃墟になりましたが、ここはあまり配信映像と差はありません。

 大きく違うのは、ばけたんを取り乱して落とした時でした。


「うわあああーー、こ、子供、子供がいるー、うわああああ」


 ガタン、ガタン、ガラガラガラ、ガタンガタン。


「うわぁぁぁー……」


 声が小さくなっていきます。

 どうやら、外へ逃げ出したようです。

 随分無人の部屋の中を写していましたが、ザブさんが帰ってきました。


「ふーふーーっ、ここに髪の長い子供の姿が見えたと思ったけど、やっぱり誰もいない、気のせいか?」


 カメラはまだザブさんを写していません、音声だけが聞こえます。


「もー限界だ、さっさと検証を終わって帰るぞ」


 この台詞の先は、配信映像のままが続きます。


 そして「帰りますーー!!」の台詞の後カメラにぶつかります。

 配信映像は揺れた映像のままここで切り替わりましたが、ディスクの映像はこのまま倒れるところまで映っていました。


 そこには一瞬だけ三面鏡がチラリと映っていました。

 ここにいくつかの、情報が潜んでいたのに、あまりにも一瞬だったことと、三面鏡を見ることが出来て何故か安心してしまい、私はそれを見落としてしまいました。


 そして、夜の検証はこのまま本当に終ってしまいました。

 だから、ザブさんは夜中に三軒目の廃墟の二階に行っていないようです。


 私は、安崎さんに会う前までに、この映像を何度も何度も見直しました。

 当然、ユーツベの配信映像も繰り返し見直しました。

 何を求めて、安崎さんは私にこの映像を見せたのでしょうか。

 そして、私に何を聞きたいのかということを考えていました。




 そんなことを考えていたら、すぐに1週間たってしまいました。


「いらっしゃい! 恵美ちゃん、貴賓席に座ってー」


 私は一番入り口に近いテーブル席にちょこんと座った。


「生中三つと、つくね、お刺身も下さい」


「あいよー、生中二つ……っえ」


 マスターは私がいつもの注文しか頼まないと思っていたらしく、私の注文が耳にはいらなかったようです。


「生中三つと、つくねとお刺身をお願いします」


 私はどうせおごりなのだからと、贅沢な注文をしました。

 安崎さんがどんな質問をしてくるのか、全く予想が出来無かった私は、今日で安崎さんに会うのも、終りになるかもしれないと思い、ちょっと贅沢をしてみたのでした。


「かはーーっ、ビールはうまい!」


 一気にビールを二杯飲み干して、貧乏な私は普段食べることのないお刺身を食べ出しました。


「恵美子さん、お待たせしましたか?」


「いいえ、きっちり約束の五分前です」


「で、どうでしたか」


 きたー、返事をどうしようかと悩みました。


「……その前に、一つ伺ってもよろしいですか」


 私は、三面鏡を隠している事は間違いないと思い、そこから話しをしようと思いました。


「はい、何でしょう」


「あの、ザブさんは何かを隠していますよね」


「すごいですね。わかりますか。やはり恵美子さんに相談して良かった!!」


 安崎さんが笑顔になり、ガリガリにやせている私の手を取った。


「……えっ」


「恵美子さん、忘れる前にこれをお渡しします。先入観無くこのディスクを見て下さい」


 私は、またブルーレイディスクを渡された。

 安崎さんは私の会計を済ますと、さっさと帰ってしまった。

 まだ途中の、刺身とつくねを食べながら、私は頭の整理が追いつかないでいた。


 どういうこと?




 帰宅した私は、すぐさまパソコンを起動して、ディスクをセットして映像を再生した。

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