シン・異世界ラーメン無双奇譚 ~こう見えて俺、ラーメン作った事が無いんだ_(:3」∠)_ だけどまぁ、思い込みが激しくてなんとかなると思ってるから、ダンジョン攻略頑張ってやる~

酸化酸素 @skryth

第1話 うちと、わちきの大発見

 俺の名前は山形次郎、41歳。ってな訳で、俺だ。おれ俺!俺だ!な、なぁ、覚えているよな?俺だぞ?



-・-・-・-・-・-・-



 よっ!元気だったか?暫く話さない内にあれから2ヶ月経ったぜ。じゃあ、手っ取り早くこの2ヶ月の間に何があったのか説明しちまうとしよう。


 ——ってな訳だ。な?こっちも色々とあっただろ?えっ?何も伝わって来ない?おいおい、大丈夫か?じゃあ、耳の穴かっぽじってちゃあんと聞いてくれよ。



 ——ってな訳だ。……あ、あのさ。やっぱり手抜きは、駄目だよな。



 あれは丁度2ヶ月前の事だ。丁度1年前なら歌にもなるんだが、丁度2ヶ月前じゃ、歌にはなんねぇな。



-・-・-・-・-・-・-



「まま、大発見大発見!!」 / 「ママ、凄いの発見したッ」


豚骨トンコッツ白湯パイタンお帰り。二人で腕試しはどうだった?ってか、そんなに慌てて二人共どうしたんだ?」


「ママ、これ見て!わちきが発見したんだよ」


 普段は冷静な白湯パイタンなんだが、その日は違っていた。まぁ、冷製白湯パイタンじゃ無ぇから、そこんトコは勘違いしないでくれよ。

 ところで冷たい白湯パイタンって旨いのかな?いやいや、そういう意味じゃ無ぇからな?幼女に冷たくされるのが好きなんだって勝手な妄想は止めてくれよ?

 んでもって話しは戻すが、そんな白湯パイタンの手のひらの中には一粒の種があった。



「種……だな?それが大発見なのか?」


「この種、アウラウネの種だよ!」


「あ、あうら……うね?洗ううね?合う羅宇……ね?」


 いやぁ、俺としては白湯パイタンが「羅宇」なんてマイノリティの塊のような専門用語を知ってる方が驚きだったんだが、まぁ、農家やってりゃうねは分かるだろうけど、俺は農家じゃ無ぇ。ん?何言ってんだろうな?



「まま、アウラウネだよ。ア・ウ・ラ・ウ・ネッ!」


「んで、その畝がどうしたんだ?その種が、その畝なのか?」


「うちがレッドオークみたいに、アウラウネはアウラウネだよ」


「んー?よく言ってる事が分から無ぇが、要するに、その種からお前達みたいなのが産まれるって事か?」


 まったくもってさ、驚きの進化論だよな。人は猿から進化したって言う進化論は手っ取り早く覆されちまうよな。ダーウィンだっけか?その、おっさんがもしこの世界に来たら、腰抜けるだろうな。豚も鶏も進化すりゃ人間になんだからさ。

 んでもって、次は種から人間が産まれるときたモンだ。


 もう鶏が先か卵が先かなんて以前に、植物の種から人間なんて考えもした事が無い事実だったぜ。



 で……結局、俺はその種を植える事にした。

 ってか、凄く見てぇって思ったんだ。鉢から生える人間ってヤツを……。だってカオス過ぎだろ?植物人間だぜ?

 いや、まぁ……その、トラック運転手やってた時に事故ってそうなっちまったヤツは見た事あっから、笑い話しじゃ無ぇし興味本位でそんな事を言ったら悪いってのは思ってる。


 思ってはいるんだが、それを地で行く植物人間ってヤツだから、それとは違う。そもそも、この世界にトラックは無ぇ。

 だからこそ地で行く植物人間に関しては興味しか湧かねぇし、そもそもダンジョンの中に家が出来るまで、特に何もする事が無い俺の楽しみが出来たって訳だ。



 ちなみに、この種は25階の課長部屋で変な臭いに気付いた白湯パイタンが、隠し通路ってヤツの先に見付けたらしいぜ。

 なんかこれ、既視感デジャヴってヤツだよな?まぁ、それ以前に、二人の腕試しで30階までは行けたらしいから、本当に俺はお払い箱なのかもしんねぇけど……。



 ってな訳で、俺は鉢に植えた種の発芽を気長に待つ事にした。まぁ、その間に切り身から「ぶし」を作る方法を色々と考えていた訳なんだが、どうやって「ぶし」を作るのかはサッパリだった。

 切り身節って一体どうやったら造れんのかね?でもなんか、切り身節って言うと、躍り出せそうな気もするよ……な?えっ……ならないの?




「お~も~いこんだぁらぁ~、一気に駆ける~♪誰が呼んだか、誰が呼んだか~、山形次郎ぉぉぉ~♪っとくらあ。あぁ、それにしても、鰹節って本当に作り方分からねぇな」


 俺は鉢に水を遣りながら考えに耽っていた。種を蒔いてから2日経ったが変化は無ぇ。なんかこれじゃ、小学生の観察日記みてぇだよな?



「そう言えば、鰹節って乾物かんぶつだよな?乾物って事は保存食って事になるよな?」


 それは鉢を見ながらある時閃いた事だった。「そうだ、乾物なのだ」と。いや、だからなんだ?とか言わないでくれよ。だって乾物っていやぁ保存食だ。保存食っていやぁ、カンパンだ。銃の弾切れはカンバンだ。いや、カンバンってなんだろうな?

 ま……まぁ、カンバンは置いといて、カンパンも作り方は分から無ぇが、ようするにボソボソするって事だろ?鰹節がボソボソしてたかなんて覚えて無ぇが、ボソボソするって事は乾燥させるって事だ。水分抜けば大抵はボソボソすっからな。



「あとはどうやって乾燥させるか……だな。この家にいるんなら天日干しで乾燥させられるが、ダンジョンの中に家が出来たら天日干しは流石に無理だ。ダンジョンの中には太陽なんてなかったからな」


 こうして俺はまた悩みの種の堂々巡りに頭を支配されていった訳さ。そして、俺が悩みの種に悩まされている頃、本物の種は蒔いてから5日目に漸く発芽した。



「違う。これじゃない。俺が見たかったのは、鉢から生えた人間だろ?なんで……なんで、普通に葉っぱなんだよ……。これじゃ、普通の植物と変わら無ぇじゃんかッ!」


 俺は正直な話しになるが、鉢に蒔いた種がどうでもよくなっていた。なんて言うか……まぁ、観察日記なんて初日と2日目だけ書いて後は最終日に纏めて書くお決まりのパターンだったし、それよりも何よりも、ダンジョン内でどうやって切り身を乾燥させるかについて考えるのに頭を使っていたからだ。

 でもま、芽吹いた以上、枯らす事はしたくねぇから水だけは遣っていたが、鉢を眺めてる時間は極端に短くなっていたのは事実だろう。

 でもな、普通に小さい鉢から人間が生えるのを楽しみにしていた俺のがっかり感は分かってくれよな……。




「まま、起きて朝だよ。うちも、ぱいたんもお腹空いたよ」


「ママ起きてくれないから、二人で食べちゃお?」


 これは俺にとってのいつも通りの朝だ。二人にとってはいつも通りの朝飯であって、コイツクレアの身体にとっては調教と同じ意味合いだ。まぁ、それが処女で婚約者がいるコイツクレアにとって、本当にいいかどうかは言わなくても分かるだろ?

 でもま、俺としてはそんな事は知ったこっちゃない。見た事も無ぇし、俺としては俺自身が結婚する気もサラサラ無ぇ婚約者なんてどうだっていいし、俺的には身体を気持ち良くしてくれるコイツらの方が何倍も大切だし、俺を母親と慕い、ダンジョンで頑張ってくれてるコイツらの腹の虫に対して無碍には出来無ぇからな。


 そんなこんなで二人の腹ごしらえが終わり、俺はあまりの気持ちの良さと眠気にボーッとしてた訳だが、着替えていた白湯パイタンに変なモノを見た気がした。



「な、なぁ、白湯パイタン……?」


「ママ、どうしたの?」


「お前のお尻になんか生えてねぇか?」


「わちきのおしり?わちきのおしりが気に入ったの?」


「いや、そぉじゃねぇ。白湯パイタンのお尻からピンクの何かが生え掛かってねぇか?」


「まま、ぱいたんはコカトリスだから、尻尾じゃないかな?コカトリスの尻尾は……蛇だっけ?」


「うん、そうだよ。わちきはまだ幼体だから、尻尾がまだ生えてないんだけど、尻尾が生えて来たなら成体になる準備が出来たって事かな?」


 俺はなんか末恐ろしい話しを聞いた気がした。尻尾が生えてるだけで違和感しかないんだが、その尻尾が蛇と聞いたからには、違和感しかないのは当然だよな?

 ハーフオークの俺には尻尾は無ぇし、レッドオークの豚骨トンコッツにも尻尾は無ぇ。だから、その辺りは普通の人間と変わりないと思ってたのに、白湯パイタンには尻尾が生えるって言うんだからさ。


 いや、待てよ?豚には尻尾があるから、そのうち豚骨トンコッツにも生えて来るんだろうか?俺は前に、おっさんが人間に近いって言ってたから尻尾は生えないと思うが……。


 ま、まぁ俺は幼女に興味は無ぇし、中身41歳のおっさんが、若い女の子に欲情すんのも可怪しいから、豚骨トンコッツの裸を見ても、ホルスタインも真っ青な胸を見ても平常心を保ててはいるが、コイツクレアの身体は15歳だからな……ってのは、言い訳にしかならねぇし、何が言いたいかもう分からねぇよ。


 要するに、尻尾が生えても生えてなくても、俺は何も変わらねぇって事だ。分かってくれよ、頼むから。

 俺は変態じゃねぇんだ。まぁ、見た目からもう既に、豚骨トンコッツは幼女には見えねぇけどな。




 そして、その日を境に豚骨トンコッツが急成長したように、白湯パイタンもまた急成長していったのさ。


 成長期ってのは産まれてから数カ月でやって来るんだって事を俺は知らなかったよ。やっぱり子育てってラクなんだな。


 正直な感想なんだが、白湯パイタン豚骨トンコッツ並には成長しなかった。いや、身長は俺を超したが……って、俺の言ってる成長はそっちじゃねぇ。

 俺としては白湯パイタン豚骨トンコッツホルスタイン並になるのかと期待しなかったと言えば嘘になる。


 だが、女の価値は胸じゃ無ぇと思ってるから、見モノっちゃ見モノだった訳だが、やっぱり鶏でもハト胸なんだなってのは感じたコトだった。

 そして、白湯パイタンもそれを気にしている様子だったってのは事実だから、まぁ、触れないようにするべきだとは感じたね。

 なんせ俺は空気が読める男だからな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る