魔法適性ゼロと無能認定済みのわたしですが、『可視の魔眼』で最強の魔法少女を目指します!~友達ゼロのぼっちなのでソロで魔王討伐を決意したら、妹と御三家令嬢たちがわたしを放そうとしない件について~

白藍まこと

01 魔法学園に入学します!


「ほんと、最悪っ!なんであんたと一緒の学園に入学なわけ!?」


 おはようございます。


 わたしはエメ・フラヴィニー、15歳。


 ところでみなさん、どう思いますか?


 入学初日の清々しい朝に、こんな罵倒を浴びるわたしの気持ち。


 期待とワクワクで胸いっぱいの気持ちが急に萎えてしまいそうです。


「そんなこと言わないでさあシャル~、一緒に学園に行こうよぉ」


「絶対ムリ!」


 即、断られました。悲しい。


 そんなツンケンしている彼女の名前はシャルロッテ・フラヴィニー。


 お名前でお分かりかと思いますが、家族です。妹なんです。


 金色のサラサラとした長い髪、愛らしい容姿に鋭い目つきのギャップがこれまた可愛い女の子です。


 わたしは今、最愛の双子の妹に罵倒されて登校を拒否られたんです。


 そんなことあります?


「あんたなんかと一緒に登校して仲良しだと思われたらどうするのよ」


「え、仲良しだよね?」


「違うから!血が繋がってるだけだから!」


「あはは、そうだよね。血が繋がってるんだから仲良しを超えた関係だよね」


「そういう意味じゃないっ!」


 地団太を踏み出すシャル。


 うーん、どうしてか分かりませんがここ最近は妙に素直じゃありません。


「シャルはお年頃だからお姉ちゃんと一緒に歩くのは恥ずかしいのかな?」


「あんたも同い年でしょうがっ!」


 そう言われると、そうだけど。


「それに!わたしはあんたが姉だなんて思ってないから!」


「ええっ!?この期に及んで赤の他人だと思ってたの!?」


 わたしたちの15年って一体……。


「だから、そういう意味じゃなくて……ああっ、もうっ!!」


 グシャグシャと自分の髪を搔きむしるシャル。


 綺麗な髪がボサボサになってかわいそうです。


「とにかく!わたしはあんたとは一緒には行かないから!」


 そう言い放つとシャルは鞄を片手に玄関へと向かっていきました。


「え!シャル、朝ごはんは!?」


「もう食べた!あんたの分はテーブルの上!」


 そう言われてテーブルを見ると、トーストされたパンにサラダとコーヒーが置いてありました。


 ううむ……さすが我が妹。抜かりなし。


「ていうかあんたね、一緒に登校したいとか言うならもっと早く支度しなさいよ!」


 シャルは髪もメイクもばっちり整え、制服に着替えて朝食を済ませている。


 対してわたしは、マヌケけな顔で寝ぐせだらけの髪、起きたばかりのパジャマ姿。


 ……何この差?


「じゃあ、明日からは早く準備するから一緒に行ってくれる?」


「ムリッ!!」


 ――バンッ!!


 玄関の扉を勢いよく閉めてシャルは家を出て行きました。


「……とほほ。シャル、冷たいなあ」


 ――サクサク


 トーストされたパンにはバターが塗ってありました。


 ほんのりした甘味がおいしいです。


 ありがとうシャル、でももうちょっと優しくしてくれたら嬉しいな。


 さあ、気を取り直して準備しよう。


        ◇◇◇


 アルマン魔法学園


 数ある魔法学園の中でも最高峰と謳われる魔法士育成機関。


 当然、その入学試験はトップレベルに難易度が高く、競争率も高い。


 数ある魔法士見習いの中でも選りすぐりのエリートのみしか足を踏み入れることの出来ない学び舎である。


 そんな憧れの学園に今日からわたしも生徒として入学できるのだ……!!


 こんなに嬉しいことはないっ!


「うわぁ……いざ入学が現実のモノになると緊張しちゃうな……」


 夢にまで見たアルマン魔法学園。


 その荘厳な校舎を見て、思わず校門の前で足を止めてしまう。


 今さらながら、わたしでは恐れ多いんじゃないかと躊躇してしまう。


「ちょっと貴女、そんな所で右往左往されていては邪魔になりましてよ」


 とヤキモキしていたら背後からきつめの声が掛かりました。


「ああっ!ご、ごめ、ごめんあそばせっ……!」


 緊張しちゃって言葉遣いがおかしなことに……!?


 わたしが中央でウロウロしていたから邪魔になってしまった。


 アホなわたしでごめんなさい、とすぐに頭を下げて端に寄る。


「? その制服……あなたもここの生徒ですの?」


 その少女は赤い髪をふわりと巻いた華憐な方でした。


「あ、はい。そう、なんです……。今日から入学で……」


「そうですか。それは大変そうですわね」


 赤髪の少女は何やら含みのある言い方でわたしを一瞥すると、そのまま颯爽と校門へと入っていくのでした。


 きびきびと歩く姿も様になっていて、どこか品があります。


 高貴な生まれの方なのかな……?と思わず目で追ってしまうほどの美少女でした。


 わたしもあんな綺麗な女の子になれたらな、なんて思いながら後を追うように校門に入っていきました。





「あっ!シャルー、わたしたち一緒のクラスだねっ!」


 この学園は一学年80人で2クラスに分かれる。


 クラス別に記載された名簿を見て教室に入ると、そこには最愛の妹の姿がありました……!


 喜んでシャルの元に駆け寄ると、彼女はこの世の終わりみたいな絶望的な形相でわたしの腕を掴みました。


「ちょっとこっち来て」


「……へ?」


 妙にドスの利いた声で廊下へ連行されました。


 それも人気のいない隅っこに。


「あんた、どういうつもり?」


「どうって……一緒のクラスになれて嬉しいなあって……」


「わたしに近づかないでって言ったよね?」


「え、それは登校だけの話じゃ……」


「一緒に登校しないんだからクラスも別行動に決まってるでしょ。馴れ馴れしくしないでよ」


「な、なんで……?わたしたち姉妹なのに……」


「こ・れ・よ!!」


 シャルは自身のブレザーの左胸にある学園の紋章、その上部にある星形のブローチを指差していた。


ステラ……だよね?」


「そうよステラ!成績上位5名にだけ与えられる勲章!」


 そう、なんとシャルは入学試験に5位という好成績を収めたのだ。


 もちろんこれは、これからの試験結果次第で順位が変わるため永続的に付けられるものではない。


 ステラの保持を許された成績優秀者、その卒業生には様々な特権が与えられる。


 ここの生徒はその星を求めてしのぎを削り、切磋琢磨していくのだ。


「そして、あんたのそ・れ!!」


 シャルは今度はわたしの左胸をぐいぃ~と強く押してくる。


 そうなのです。実はわたしもブローチを頂いているのです。


「えへへ……なんか改めて言われると恥ずかしいなぁ」


 わたしは改めて妹に指摘されて、その視線から逃げたくなってしまう。


「ええ、そうでしょうねっ!あんたのはラピスなんだから!恥さらしもいい所よ!」


 わたしの左胸には真四角のブローチがあるのです。


 ラピスとはステラの逆で、成績最下位の者に与えられるモノです。


 天に輝くステラと、地上に転がる石ころラピスとの落差を表現しているんだとか……。


 要するにわたし、この学園でビリなんです。


 妹はお星さまで、姉は石ころ……とほほ。


「ステラ保持者がラピスと仲良くするわけないでしょ!?しかも、それが姉妹とか……ああ、ムリ、絶対知られたくない!赤の他人のフリしてよねっ」


「それはさすがにちょっとムリがあるんじゃ……苗字一緒だし」


「今から偽名使って」


「わたしと姉妹なの、そんなにイヤ!?」


 ショックなのです……。


 いくら優秀な妹と、アホな姉だったとしても、それで縁は切らないで欲しいんだけど……。


「とにかく、せめてその不名誉な勲章をどうにかしてくれたら考えてあげるけど。それを付けている内はわたしに関わらないでよね!」


「そんなあ……」


 シャルはそのままふんっと鼻を鳴らして教室に戻っていく。


 わたしはキラキラと輝くラピスを取ってやりたくなりました。

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