第14話

血の風呂だった。そして血まみれの妻の顔が浮かんでいた。


尻もちをついて尾てい骨をいやというほど打った。「いてぇ」叫んで立ち上がってみると、お湯は普通のお湯だった。妻の顔も浮かんではいなかった。天井も見たがいつもの天井だった。

急いでソープで身体を洗い、シャンプーで頭を洗ってシャワーで流した。

頭を拭きながらリビングのソファに座って麦茶を飲んだ。

 

一人でいると、あちこちから色んな音が聞こえてくる。


冷蔵庫の製氷機が氷を作る音。その氷が容器に落ちる音。冷凍庫が庫内を冷やす時のモーター音。

恐らく、気温の変化で家の柱が軋んたり、

屋根の上でカラスが歩いたり、

シーンとしていると、そういう音がするたびにびくりとする。

だからテレビをつけて気を紛らわす。

その後は何事も無く夕方を向かえた。

 

7時過ぎにインターホンが鳴った。夕べを思い出して一瞬ドキリとしたが、モニターにひまりの姿が見えた。玄関を開けると、両手に荷物を一杯抱えた本人が立っていた。


「おかえり」声を掛けると「ただいま」と笑顔で答えた。

まず、衣類は二階に運び妻の下着類は全部ゴミ箱へ。新しいものをしまう。

そのほかは、妻のものと自分のものと置く場所や掛ける場所を分けた。

化粧品類も全取替だ。

そのた細々したものも引き出しを別にした。

一通り片が付いて、時計を見ると9時を回っていた。

ひまりが弁当を買ってきていたので、夕食は弁当にウイスキーになった。

俺は夕べの話をしたがひまりは上の空で聞いていた。

 

10時になって、明日も仕事だからといって寝ることにした。

リビングの電気を消して二階に上がる。

俺はびくびくしながら動いていたが、ひまりはまったく普段通りだ。


ベッドに入って隣にひまりがいても、まったくその気にはなれないまま電気を消した。

ひまりが腕を回してきたが、今日はダメだと言って布団を被った。


それを見たひまりはいたずら心を起して、布団に潜り込んで俺を触りまくる。


刺激されてその気になってきた。

ひまりを捕まえて布団から顔を出させる。


ぬーっと出て顔は、血まみれの妻のだった。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る