第8話

えっと思った。

さっきのは何だったのか?寝ぼけたか?

一瞬寝てしまって、その間に戻ったのか?

考えているうちに寝入ってしまった。

 

朝、目覚めるとひまりはもうベッドにはいなかった。

階下にコーヒーの良い匂いがした。

ひまりは台所に立っていた。


「おはよう」と声を掛けた。振向いた顔は妻のそれになっていた。


「わっ」叫んでしまったが、ここから出るときは妻の化粧をし、昨日とは別の妻の服を着ることにしていたことを思い出した。

文句を言うひまりにゴメンと謝った。


一応庭を確認してから、洋風な朝食を摂ってひまりとは出る時間をずらして出社した。

ひまりは今夜自宅へ戻って衣類を少し運ぶ準備をしたいという。

だから、今夜は一人になる。

 

7時に仕事を終えて、近くの居酒屋で食事をして一杯飲んで帰宅した。

9時を回っていた。

玄関を開けると真っ暗だ。

今までは妻が必ず家に居たので明るい家に帰っていたが、これからはそうはいかなかった。

自分で灯りを点け、カーテンを閉め風呂を用意して、そう考えると面倒でしかたなかったが、やむを得ない。

ちらっと庭に目をやる。

変わった様子はなかった。

風呂は一杯になったら自動で止まる。

ほかにすることはないのでウイスキーを飲むことにした。

テレビをつけてキッチンに行く。


朝食で使った食器は綺麗に洗ってあった。

氷をアイスペールに一杯いれて、リビングに戻り、グラスに氷をいれてウイスキーを注いで飲む。

いつもの味がした。

テレビでは野球の中継をやっていた。


二階でガタガタッと物音がする。

誰もいないはずの二階には3部屋と洗面所とトイレとシャワールームがある。


大して気にしていなかったが、鳴りやまないので何かと思って階段をあがった。


電気を点けながら階段の中ほどまで上がると、音が止んだ。


どうしようかと思ったが、一応見てみることにした。

初めは使っていない子供部屋。開けると真っ暗。


窓を見ると人影が映っていて、「わっ」と叫んでしまった。

 

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