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 話があるので一緒に学校に行こう、とトオルが言うので、とりあえず待たせておいて、学校の準備を進める。

 髪とか寝癖だらけでどうにかしたかったけど、もう時間的に無理だな。

 というか、

 

「ねねねねね、お兄ちゃん、あの人めちゃくちゃ綺麗だよ!?」

「そうだな」

「モデルさん? あの制服、男子のだよね? え、男装? 男装美少女?」

「男だよ」

「うそー! ちょっと可愛すぎませんか!」

「お前の方が可愛いよ」

「いやーん! お兄ちゃんたら妹好きすぎなんだから! でも、あの人には負けるかも!」

 

 くねくね。

 桜子がまとわりついてきてて、めちゃくちゃ邪魔だった……。

 女子ってホント中性的な男子が好きな。


「お兄ちゃんの彼女、ってわけじゃないよね」

「ぶっ飛ばすぞ、男だっつってんだろ」

「えー、それ関係なくない?」


 女子ってホント、そういうのが好きな!

 別に同性愛者に対して思うところはないが、少なくとも俺は女子が好きだ。

 特におっぱいが小ぶりなピュアなタイプの娘が好みだ。

 例えば目の前にいる桜子とかトオルみたいなタイプの……


(ヤベェ)


 なにやら今考えたことに危険を感じて、あわてて脳から振り払った。

 桜子はまだなにやらギャーギャー話ししてるが、適当にあしらいつつ、手っ取り早く顔を洗う。

 パンを片手に家を出ると、キラキラした目でトオルが待っていた。


「待たせたな」

「いえ、全然」

「じゃあ、行くか」

「はい」

 

 二人並んで歩き始める。

 背後からドア越しに「きゃー!」みたいな桜子の声が聞こえてきたが、無視する。

 何がしたいんだ、あいつは……。


 学校まで、歩きでだいたい30分程度の距離だ。いつもは軽く走るので、だいたい20分程度。

 歩きながら、またもお礼を言われる。

 

「改めまして、先輩、ありがとうございます」

「いや、さっきも言ったけど、流れ的にそうなっちゃっただけで、大したことじゃないから」


 嘘です。めっちゃ大変でした。

 死ぬかと思いました。


「助けてもらったのは事実です。それに加賀先輩から聞きました」

「何を?」

「阿先輩が、ボクを担いで逃げてくれたって」

「まぁ、そうだな」

「そして、あの変な二人からボクを守ってくれたって」

「まぁ、守れたかどうかは別としてな」

「さらには、あの変な二人をやっつけてくれたんですよね」

「ぶっ」

 

 なんじゃそりゃ!

 

「いやいや、誤解がある。倒したのは俺じゃねぇよ」

「えっ、でも加賀先輩が、阿先輩が箒一本であの二人をあっという間にやっつけたって言ってましたよ」

 

 んなわけあるか!

 箒は手にして5秒くらいでスッパリと短くされたわ。


 あのときの恐怖をジワリと思い出す。

 

「それは加賀さんの嘘だ」

「えー、そうなんですか?」

「あたり前だろ」

「でも、阿先輩、鬼神のように強かったって」

「嘘だ」

「壁走りしながら戦ってたって」

「いや、それはさすがに嘘だと気付こうぜ?!」

「最後には『命だけは助けてやる、次はない』って、ボロボロになった二人を見逃してやった、と」

「誰だそのかっこいい奴は?!」

 

 何ふかしちゃってんのあの先輩!

 

「お前を助けたのは、加賀さんだよ」

「え、そうなんですか?」

「ああ。あの人が、あの変な二人組を追い払ってくれた。俺はただ、お前を担いで逃げ惑ってただけだ」

「この場合、どちらの話を信じればいいんでしょうか」

「常識的に考えろ。壁走りなんぞできるわけねぇだろうが」


 ひょっとしてバカなんじゃないか、こいつ。

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