第129話 想像しただけでイってしまいそう

「何故聖女にたいしてお前ごときが指図できるのだ?」

「ちっ!! ヒルデガルドッ! 後日又訪れるからなっ!! その時まで待っておれっ!!」


 そして、プレヴォから皇帝陛下と呼ばれていた男性はそう言い、私の手首をつかんで外に出ようとしたプレヴォから私を解放してくれる。


 しかしながらこの男性が本当に隣国のトップである皇帝陛下様であったとして、何故そんなお方がわざわざ他国の僧院まで訪れたのか、謎は深まるばかりである。


「なるほど、なるほど……。 権力というのはこのようにして使うと最高の快感を味わえるのか……」


 そして、プレヴォから皇帝陛下と呼ばれていた男性はそう静かに呟くのであった。





 何故今我が隣国の聖王国の僧院にいるかと言うと、カイザル様にストレスの発散方法を教えてもらったのと、そのストレスの捌け口にできる人材の探し方を教えてもらったからである。


 カイザル様の奴隷となってから二週間程で我の身体に異変が起き始めていた。


 その異変とは、人を我の権力でもって痛めつけたい、なんなら殺したいという衝動を無理やり抑え込んでしまった結果手足の震えが出始めて来たのである。


 その事をカイザル様に伝え、相談および改善方法を教えてもらったのだが、カイザル曰く今の我は禁断症状が出ているらしく、人を痛めつける事ができるのならば改善できるとの事である。


 しかしながら今の我はカイザル様の教えによって人を理由なく痛めつける事、それこそ今まで見たいに気に入らないからといって殺すことなどできない為、我はこの禁断症状とやらと一生付き合っていかなければならないのか? とゾッとしてしまう。


 そして、そんな我を見てカイザル様が『理由なく痛めつけるのがダメなのであって、痛めつける正当な理由があれば痛めつけても良いのでは?』とおっしゃってくれたのである。


 しかしながら今我の周りにはそのような人物がおらず(一度カイザル様が粛清してしまった為)、だからと言って既に捕まっており、あとは刑が執行される事を待つだけの罪人をを痛めつけるのは何かが違う気がするのである。


 そんな感じでどうしたものかと考えていると、カイザル様はさらに『だったら隣国の権力者の中で不正に悪さをしている奴の中から正義という名の大義名分を掲げて痛めつければ良いのでは?』と教えてくれたのである。


 そのカイザル様の言葉を聞いた瞬間我の身体に電流が走ったかのような衝撃を受ける。


 隣国の貴族を正義の名の下で痛めつける……想像しただけでイってしまいそうではないか。


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