理想の……

「ごちそうさまー。美味しかったぁ」

「私も、美味しかったよ、お母さん」

「あぁ、こんなに美味いミナの飯がまた食えるなんて、夢みたいだ!」

「口にあったようで良かったわ」


 美味しかったなぁ。私も料理したくなってきちゃうよ。ティアじゃない私じゃ料理なんて出来ないけど、ティア……今の私には料理スキルがあるんだよね! ふふふ、想像するだけで作り方と材料が分かるよ! ケーキだって作れちゃう! 卵とかこの世界にあるか分からないから、難しいかもだけど。とにかく料理スキルで今の私は料理においても最強なんだよ!


「それじゃあ、ミナも元気になったみたいだし、今日は帰るな」

「ええ、今日までありがとうね」

「わ、私からも、ありがとうございます」


 リブは帰って行った。リブも泊まってけばよかったのに。いや、私が思うことじゃないけどね。


「それじゃあ二人とも、お風呂入っちゃいましょ」

「うん! えへへ、お母さんとティアお姉ちゃんと一緒……」


 ミュレ……なんて可愛い子。尊いってこういう時に使うのかな。尊いよ。

 と言うかこの世界お風呂あるんだ。まぁ、道行く人めっちゃ汚い! って人は特に見なかったな。貧民街とかあると思うし、そういう人もいるんだろうけどね。とにかくお風呂あるんだ! 裸の付き合いだぁ!!! 裸の付き合いなんて初めてだよ! 楽しみだなぁ。


「ティアお姉ちゃん?」

「ん、ごめんごめん。ぼーっとしてたよ」

「こっちだよ、ティアお姉ちゃん」


 ミュレに手を引っ張られ、お風呂の前まで連れていかれる。


「二人とも脱いだ服はここに入れてね〜」


 ミナさんがそう言って服を脱ぎ始める。ミュレもそれに続く。

 私はどうしようかな……私って見た目は普通の服を着てるけど、ユニーク装備なんだよねこれ。しかも課金アイテム使いまくって、上限まで強化してあったりする。ミナさんとミュレを信用して無いわけじゃないけど、適当に脱いで置いておくだけなのは流石に躊躇われる。私の装備汚れない仕様だし。

 私は服を脱ぎ、インベントリの中に入れる。


「ティアちゃん、今のは?」

「そう言えば、ティアお姉ちゃんオークナイトもそうやってたよね」

「インベントリの中に入れたんだよ〜」

「……インベントリ? アイテム袋のようなものかしら?」

「多分そうかなぁ?」

「そう? 服とか洗わなくて大丈夫?」

「大丈夫だよ。汚れない服だから。それより早く入ろ? 体冷えちゃうよ」

「それもそうね。せっかく元気になったのに、熱を出しちゃったら大変だものね」

「お母さん、ティアお姉ちゃん早く入ろー」


 私とミナさんは頷いて、お風呂に三人で入る。

 

 ……え? でかくない? ミナさん。着痩せするタイプだったのか。……ちなみに私はBカップぐらいだよ。普通なら羨ましい視線だったり、妬ましい視線を送るのかもだけど、生憎とティアは私の理想の姿だからそんなことはしない。

 ミュレも将来はああなるのかなぁ? 胸って遺伝するものなのかな……わかんないや。

 まぁ、そんなことはどうでもいい! ミュレの髪を洗って……はっ! もうミナさんに洗われてる。くっ、私がミナさんの胸を見てたばっかりに……仕方ないか。はぁ。


「ティアちゃんも洗ってあげるわね」

「えっ、う、うん」


 はっ! つい頷いちゃった。親がクズだったから、こういう優しいママを想像してたことがあったからなぁ。仕方ない、今日ぐらいは甘えよう。最強の私だけど、今日ぐらいはいいよね。


「それじゃあティアちゃん、こっちおいで」

「……うん」

「ミュレはちゃんと体を洗ってからお湯に浸かるのよ」

「分かった!」


 そして、ミナさんが耳の裏までちゃんと洗ってくれる。ちょっと恥ずかしいけど、気持ちいいな。人に洗われるってこんな感覚なんだ。






「久しぶりね〜、湯船に浸かるのは」

「気持ちいいねぇ」

「気持ちいいねぇ」


 ミュレが私の言葉を真似する。いやー、可愛い妹だよ。


 そうしてしばらく浸かっているとミュレが、ぼーっとしてきた。のぼせちゃったかな? 

 ミナさんもミュレの様子に気がついたみたい。


「私たちはそろそろ上がるわね」

「私も上がるよ〜」


 ミュレがミナさんに体を拭かれている。私もミナさんに渡されたタオルで体を拭く。

 着替えはミナさんのを借りた。胸の部分がぶかぶかだね。


「ん〜、お母さん……」

「ふふ、そろそろミュレは寝ましょうか」

「お母さんと一緒がいい……」

「もちろん私も一緒に寝るわよ」

「私はどこで寝ればいい?」

「ティアちゃんも一緒に寝るのよ?」

「えっ、いやいや、親子で寝なよ」

「ティアお姉ちゃんも……一緒に寝よ?」

「ミュレもこう言ってるわよ?」

「うっ、いや、二人がいいなら私もいいんだけどね」

「決まりね」


 誰かと寝るのなんてほんとに何年ぶりだろ。むしろ一回もないんじゃないかな……


「ティアちゃんも早くおいで」


 そう言ってミナさんはベッドの中から手招きする。


「う、うん」


 ミュレをミナさんと一緒に挟む形でベッドに入る。


「お母さんとティアお姉ちゃんで暖かい……二人ともおやすみ」

「おやすみなさい」

「おやすみ〜」


 おやすみ。こんな簡単な挨拶も何年ぶりに発したんだろ。なんか泣きそう。さっさと私も目を瞑って寝よ。

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