第33話 知ってた

【強化スキルの効果時間が終了しました。アーロイにかかっていたバフが全て消滅します】


その表示が出た瞬間にアーロイが舌打ち。


「ちっ!運が悪い!」


バックステップするアーロイを追う。

ここから距離を取ってバフを、強化スキルを使うだろう。


この時間内に仕留めるしかない。

反撃開始。


アーロイのステータスを確認する。


名前:アーロイ

レベル:98

体力:170

攻撃力:70

防御力:68

素早さ:80

魔力:94


現在体力:170


名前:アイル

レベル:89

体力:157

攻撃力:89

防御力:86

素早さ:91

魔力:80


現在体力:1

強化状態:ガッツ


速度では俺の方が勝っている。


「っ!」


驚くアーロイを何度か斬りつける!

ザン!


「がっ!」


アーロイ

体力:120/170


ここまで数十秒。

残り時間で削り切れる自信が無い。


どこかで勝負を仕掛ける必要がある。


「攻撃強化!素早さ強化!防御強化!竜王の加護!精霊王の加護!」


【アーロイの攻撃能力が上がりました】


アーロイがバックステップで下がりながら使うスキルを唱えていく。

それを追いかける。


攻撃強化だけは先に通したようだが、こいつは先ず攻撃してこないだろう。


こいつはEランクのウルフを相手にする時にすらバフが切れたら撤退していた。

こいつは必ずこのままバックステップする。


更に踏み込んで剣で突く。


「がはっ!!」

「お前が下がるのなんてお見通しだよ」


読み通り剣の先端が1番ダメージの大きいタイミングでアーロイにヒット。


「せ、先端当てかよ」


肘を伸ばしきった状態で先端ヒットさせるとダメージが跳ね上がる。

しかし、肘が伸ばせず詰まった場合などはダメージが大きく下がる。


アーロイ

体力:5/170


その時


【ステータス強化スキルの使用申請受理。30秒後にアーロイの全てのステータスが上がります】


そう表示されたけど、この調子ならそれ以内に終わる。


「10秒も俺がもたねぇなぁ?これ」


アーロイも流れが分かっているようだ。

やがて右手を右目の眼帯に持っていく。


「人間相手に……。ここまで俺に使わせる奴は初めてだ。誇れよアイル。まだ隠し玉があるんだよ俺には」


左目を閉じて眼帯をめくろうとするアーロイ。シノが叫んできた。


「み、見ちゃダメだよ!お兄ちゃん!嫌な予感がする!」


シノの叫びからタイミングを少しずらして俺は念の為持ってきたマントで体を隠す。

そうしながらナイフの刀身だけをマントを切り裂き外に出した。


「俺の、右目は見た者の体力を強制的に0にする魔眼だ。ガッツなんて無視して貫通するぜ?」


アーロイがそう言いながらめくり、魔眼を露出させたらしいその時


「がはっ!」


アーロイの体力が即0になった。

どサリと倒れるアーロイ。


ふぅ、危なかった。

アーロイの戦績が更新された。


6,020,535勝0敗

から

6,020,535勝1敗


化け物だ。

1日1,000戦程度してその全てに十何年間も勝ち続けてきたような数字だ、これは。

その化け物に今初めての敗北が刻み込まれた。


シノなんかじゃ到底太刀打ちできない本物の化け物。


「くそが……」


寝転びながら拳で地面を叩くアーロイ。


「何で俺が……負ける……」


そう言いながら立ち上がる。

魔眼は潰れたのか右目から血が滴る。


「魔眼のことは誰にも言っていない。なぜ分かった?」


別に知ってた訳じゃないけど常に眼帯で右目を隠しているところから何となく魔眼を持ってるんじゃないかと推測した。

眼帯をしているのは暴発ぼうはつしてはいけないからだろう。


「ふっ、まぁいい」


笑い出すアーロイ。

その時


「お兄ちゃん!すごい!こんな化け物に勝っちゃうなんて!!!!」


スライムを抱えたシノがよってきた。


「俺の負けだ。言った通り仲間になろう。好きに使えよ。これでも王様の駒だから無理な時もあるけどさ」


その時アーロイの自己強化が遅れて発動してきた。


「ヒール」


俺たち3人、いや、スライムの分まで体力をマックスまで回復させた。


俺とシノの体力は3桁なのに、アーロイ1人だけ体力表示は5桁とかになっている。


それを見てほんとに格の差を思い知らされたよ。

神様に愛されるってこういうことなんだな。


若干ナイーブになりながらシノとアーロイに目をやって、俺はダンジョンから出ることにした。


その道中、攻略法としてもう1つ考えていたことをアーロイに試すことにした。

それはバフかけ。3つほどバフをかけてみる。


【アーロイの強化状態が解除されます】


「やっぱりか。97なんていう中途半端なスキル数で気になってた」

「バフの量100にすると全部消えちまうんだよ」


そう言いながらまたアーロイがバフをかけ始める。

どういう仕組みか知らないけどあんまりにバフ量が多いと全部解除されるらしい。

この世界の仕様なんだと思う。


シノに目をやるとスライムを頭に乗せていた。

プルプル震えるスライム。


「スライムかわいいー」


シノがぷにぷにスライムをつつく。

なつきはしないと思うけど随分と大人しいなこの個体。


「飼うのか?」

「うん!」

「ちゃんと世話はやってあげなよ」


たまにスライムを飼うという人はいるのを思い出した。

水を定期的に与えてやればそれだけで生きるらしいから非常に飼うのが簡単らしい。

その時視線を感じて振り返った。でも何もいない。


「どうしたの?お兄ちゃん」

「いや、何も無い」


気のせいか?

何かいたならアーロイも反応するだろうし

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