第27話 スイレンの依頼

アーロイと再会した翌日。

店に来たスイレンとカノンは同行を依頼してきた。


そして何故かシノが付いてきているが。


ちなみに昨日の件だけど説明を聞くとアーロイが挑発してきたらしいから乗って、ボコボコにされたらしい。

本当に挑発には弱いらしい。


それにしても、あのー、経験値屋さんがメインなのであんま引っ張り出さないで欲しいんですけどね、俺は。


「最近ぶにょぶにょした巨人の化け物の目撃情報が多発しているようでしてね」


そう口にするスイレン。

あれの事だろうなぁ、と思う。


俺の初期型自動レベリング装置が生み出してしまった悲劇のモンスターの事だと思う。


俺だって反省して後のバージョンの装置はあれを生み出さないように1匹のスライムが残らないように改良してある。


「私が倒すもん!」


シノはブリブリ怒っている。

そうしてから俺を見てきた。


「私の戦績汚したことの責任取ってよ……」


いいだろ戦績くらい。

涙目で俺を見てきてるけどこいつの戦績は未だ勝率99とかだったと思う。


十分じゃん?って思うけど。


「私あの日初めて敗北の味を知ったの。とても悔しくて悔しくて、でもアイルお兄ちゃんのあの勝ち誇った目が忘れられないの」


なんか変な扉開いてない?この子。


「アイルお兄ちゃんになら私の敗北いっぱいあげるから」

「要らないよ」


そんな会話をしているとスイレン達がどうやってシノに勝ったのか聞いてきたので2人だけに説明する。


シノに聞かれたらこいつが強くなりそうだしやめとこう。

ほら、俺対戦ゲーム出身だから相手の嫌がることはいくらでもするよ。


「なるほど。それなら確かに相手出来そうですけど実戦で出来るかどうかは本当に勇気が必要ですよね。少なくとも私には出来ませんよ」


そう口にするスイレン。

カノンとシノは軽く手合わせしているようだけど。


ビタン!

シノが足を引っ掛けられて転けていた。


「こんな感じかな。盗賊の私で反応結構ギリギリだったから一般人は無理だろうねぇ」


そう口にするカノン。

多分盗賊だから目と体の反応はいいんだろう。


「うぇぇぇぇん、また負けたーーー。よしよししてーアイルお兄ちゃぁぁん」


俺の胸に飛び込んでくるシノ。

やっぱりシノの甘いところは勇者パーティくらいの上級者になると見切れるようだ。


「でもすごいなーアイルは。こんなこと直ぐに思いついて決闘で出来るなんて並の精神力じゃ無理だよ」


そう言ってくるカノン。

まぁ俺対戦ゲーマーだからずっと上位陣と読み合ってきたからさ。


そこはね。

同じ技しか使えないなら対策は簡単ってものですよ。


こんなもの我々ゲーマーの常識ですから。


「で?今回は偵察だけなのか?」


俺はスイレンに聞いてみた。


「そうでしてよ、まず化け物が実在するのかを確認。それが出来ましたら王都に戻り王へ報告」


その後はどうする?アーロイにでも依頼するのか?と聞いてみたら。


「もうお会いしたんですね、アーロイには」


知っているかのように口を開いた。


「多分今回はアーロイには任せませんよ。彼は暗部の最終兵器。とりあえず候補生達に任せると思われます」


と、勇者パーティの候補生でとりあえずクエストを行うと説明するスイレン。

どのような形態になるかは化け物の動向を見て考えるとのこと。


しばらく目撃情報のあった場所に向かって歩いていたら夜になった。


あの化け物は夜に行動する。

出るとしたらここから、だが。


「オォォォォォォォォォォォォォォ」


その時どこからともなく声が響いてきた。

そちらを見るとあの化け物が出現していた。


名前:怨念に支配されしデーモンスライム

レベル:240

全長:18メートル

タイプ:無属性


「あら?少し目撃情報のあった場所とはズレているみたいですね」


スイレンの分析。

俺も以前見かけた時はもっとあの村に近かったと思うけど。


ズシーン、ズシーン。


とその巨体を揺らしながら移動する。

ちなみに牛歩だ。


カメのような移動速度でしかないが。


「王都に向かってるのかこれ」

「そのようですね」


スイレンが答えてくる。


「化け物の実在は確認しました。王都に戻りましょう」


彼女がそう言った時。

シノが走り出した。


「お、おい!ばか!」

「いいとこ見せるんだから!」


シノが走っていき、ザン!!!!

スライムを切りつけたが。


効いていない。


スライムの体に突き立てられた剣は抜けずに、パァァァァン!!!!!

とビンタされて吹き飛ばされる。


「きゃっ!」


飛ばされてくるシノの進行方向に丁度俺がいた。

キャッチ。

だから言ったろうと目で問いかける。


「お、お兄ちゃんお尻さわってる」


そう言われて意識を向けてすぐに下ろした。

流石に12歳はやばい。


「お兄ちゃんならもっと触っていいよー♡」


そう言ってくるシノだが無視して、雇い主のスイレンの指示に従う。

あんなの今は勝てるわけない。レベルが違いすぎるし。


村に出ていた時だって俺達だって撃退するのに大砲とか色々用意してたから凌げただけだし。


「シノ?生きたいならば無駄な行動はやめてください。目的は達成しました。一旦下がりますよ」

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