第6話 勝本・竜理・ギバーソン・べアーニャ・刈谷

 ―同時刻・刈谷宅―


 その頃、学校が休みのため自宅で新聞を読んで、くつろぐ刈谷の姿があった。新聞もまたページを開けたら、一つ一つ記事について詳細な説明を記したサブビジョンが表示されるため、視力の低い人でも見やすいだけでなく、音声も流れるため、目の見えない人でも読みやすいようになっているのだ。


 「来月上旬に、アメリカから『レクサス・ギバーソン』防衛長官と『ルーク・ベアーニャ』副長官が、我が国の大臣と対談かぁ。日時は不明みたいだが。」


 刈谷によると、11月に米国の防衛長官・副長官が来日するらしく、報道されているのは、日本の大臣と対談するというものである。


 「しかし、ちゃんと来日した際の警備の方は準備万全に出来ているだろうか?2022年の参院選で、元首相が撃たれる事件があったから、あのような警備の甘さはあってはいけないからな。来日は良いが、そこが気になるところだ。」


 刈谷は、米国官僚の来日には好意的だが、1万年前の事件のことを知っているため、警備態勢がしっかりしているのか、やや不安であったようだ。そんな刈谷の元に、彼の妻がやってきたのである。


 「あなた、ちょっと鶴橋で何か買ってくるけど、晩ごはんは何食べたいの?」


 「お肉とキムチ買ってきてくれ。」


 「分かったわ。」


 「1万年以上続く味は美味しいからな。」


 「そうですね」



 ―同時刻・堺市内の公園―


 「強気な女は嫌いじゃないが、ここで処分しとくか・・・!!」


 「・・・!?」


 竜理の喉元に、包丁を近付ける男性。竜理は、死を一瞬覚悟していたのか、心の中で叫ぶ。


 「(わ、私、もう人生終わりかも!?)」


 「あの〜、すみません。こちら大阪府警の違法金属取締専門の違法金属対策課です。・・・って、あなた!?何してるんですか!?」


 突然、二人のもとに警察官が現れたのである。包丁を持つ男性は慌てて逃走し、竜理はすぐ、警察官に頭を下げたのであった。


 「助かりました!!ありがとうございます!!」


 「は、はあ・・・ところで何があったか聴きたいので、氏名や住所を教えてもらえませんでしょうか?」


 「は、はい!私は上条竜理といいます。住所は・・・」



 ――


 「僕は大阪府警違法金属対策課の、名前は【勝本かつもと秋親あきちか】といいます!ちなみに大阪育ちの38歳です!!」


 「勝本さんというんですね!」


 「はい!この道16年で頑張っています!必ず、違法金属を撲滅させてやるんだ!・・・と、意気込んでいます(笑)。」


 「・・・16年!?すごいですね!頑張ってくださいね!」


 竜理を助けたのは、大阪府警の勝本秋親(38)で、まだまだ若いが、実は16年目のベテランである。


 「勝本さんはどうしてここに?」


 「ああ、この辺で違法金属の一部が見つかったという情報があって、それを確かめに来た際に、君が・・・」


 「あの、さっきの逃げた人がまさに、違法金属に関わっているらしいんです。」


 「な、何やて!?それは捕まえないといけないなあ!!情報ありがとうございますっっ!!」


 「こちらこそありがとうございます!」


 勝本が公園に来たのは、違法金属の情報があったからだが、竜理を襲った人物が、それと知るやいなやすぐに追いかけに行くのであった。竜理のお礼の言葉を聞くと、敬礼のポーズをして、公園から去っていったのである。


 「・・・すごい優しい人。いいなあ。」


 助けられただけではなく、その優しそうな人柄に、竜理はいつの間にか惚れてしまったようだ。竜理と勝本がこれからどう関わるか、竜理にとっても気になるところだ。



 【第6話・完】

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