第25話推し燃ゆ

2023年11月12日(日)、動画配信サイト「ポコチャ」で知り合ったアイドルの翠(すい)ちゃんのライブを観に、代々木のライブハウス「代々木ラボ」まで行った。翠(すい)ちゃんが所属するのは「凸凹(でこぼこ)」というアイドルグループである。まだ18歳で現役女子高生の翠ちゃんは「凸凹(でこぼこ)」の最年少メンバーである。


11時30分開場、12時00分開演だ。

事前に払ったチケット代2000円とは別に入り口でドリンク代600円を取られる。他に翠ちゃんと約束したサイン入りツーショットチェキ代1500円もかかる。ギリギリのお金しか持ってきていなかったので少し懐が心配だった。


ライブが始まった。トップバッターが翠ちゃんだ。2曲ほど歌って踊って次のグループにチェンジした。「凸凹(でこぼこ)」は3つのアイドルグループで構成されたユニットだ。翠ちゃんだけがピンである。それだけ期待されているのだろう。


3グループがパフォーマンスを終えると、最後はアイドル全員が集合して2曲歌った。ラストの「LOVEマシーン」はおじさんたちもみんな知っているので、オーディエンス全員がノリノリだったが、最年少メンバーで人一倍小柄な翠ちゃんは先輩たちに遠慮しているのか大人しめのパフォーマンスだった。


すべての楽曲が終わり最後はグッズ販売とチェキの撮影である。スタッフさんたちが準備するのに20分ほど待たされた。そして、いよいよ翠ちゃんに話しかける場面がやってきた。


「来てくれたんだね、ポンジ。すぐ、分かったよ!」

さっきまでの遠慮がちはどこへやら、翠ちゃんははつらつとタメ語でponziに語りかけた。

「アイドルのライブ観るの初めてだって言ってたよね!」

「うん(笑)」


「翠ちゃん、時間ですよー」

スタッフから巻きが入る。

「じゃあ、またね。ポンジ!」

「じゃあのー」

お互いに手を振る。

ツーショットチェキを撮ってサインをもらって、ponziは意気揚々と代々木ラボを後にした。


江戸川区のグループホームに帰ってからもまたポコチャを視聴してしまう。

今度は推しの、台湾在住獣医学部生23歳の「ゆゆちゃん」を視聴した。ゆゆちゃんは配信時間と獲得コインが足りなくてランクが落ちそうだと焦って、今日1日で10時間も配信していた。

「なんとかならない?ponziさん」

手持ちのコインはゼロでお金もいくらもなかった。

「ちょっとコイン調達してくる!」


無料コインを獲得して還元なしで構わないという、通称「ボックス枠」を中心に観て回る。

その中に「チャマちゃん」というコがいた。メンヘラでぽっちゃりでシンガーソングライターだという。

コメントをしないと無料コインはもらえないので、色々突っ込んだ会話をしていく。

チャマちゃんはダメ男ばかりと付き合ってきたらしい。

「じゃあ、チャマちゃんの歴代彼氏の話を聞かせてー(´・ω・`)」

「一番酷かったのはねぇ。愛媛の彼氏なんだけど、突然愛媛のホテルに呼び出されて、私7時間かけて行ったんだけど、15分で事を済ませて先にホテルから出ちゃったの。私の財布から全財産14万抜いて」

「それでホテル代も払えなくて、支配人のおじさんに相談したら、「大丈夫だよ」って言って私を一晩抱いて。で、帰りに空港まで車で送ってくれて。飛行機代も出してくれて、チューして帰って行った(笑)」

「それは酷いね」

「誰にでも股開く女じゃないんだけど(笑)」

「中学の時なんか、いじめっ子の男の子10人に囲まれて。女の子1人に男10人でしょ。あとは言えない(笑)」

「めちゃくちゃじゃん( ̄▽ ̄;)」


ポコチャやミクチャなどライブ動画配信サイトで推し活をしていると、世の中の本音が見えてくる。年端もいかない10代の女子中高生のライブに数万円、数十万円、ときには数百万円の投げ銭をするヘテロ大人たち。数百万円というのはサイト運営者が社会的影響を考慮して自主規制を設けているからで。制限がなければ億を超える投げ銭が飛び交うであろうことは想像にかたくない。そういう投げ銭ができるのは反社ばかりだ。別に良い悪いの話をしている訳ではない。本音だと言ってるだけだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る