第7話サエちゃん

サエちゃんはオイシックスの利用者だったが、休憩時間はいつも隅っこで大人しく本を読んだりしているタイプだった。


豪志は以前からサエちゃんが気になっていたので、思い切って声を掛けてみた。

「こんにちは。お名前なんていうんですか」

「あ、えと、スズキサエコです」


そこから徐々に仲良くなっていき、休みの日に2人で南千住に行く約束をした。


練りにねったデートコースだったが。南千住駅から吉原を回って山谷を回って帰ってくるというプラン。


吉原は普通の女の子は行かないので物珍しさでウケるのではと思ったのだが、サエちゃんはむしろムッとしているようだった。


「これはハズしたかな」と思ったが、山谷に向かうとサエちゃんの機嫌は良くなり、色々興味深そうに見ていた。


「あれ、なんですかね?」

「玉子弁当150円」のお店に並ぶ行列を指したので、豪志は、

「あー、あれ、教会じゃない?ほらあそこに十字架が見える。きっとボランティアだよ」


さらに、路地裏の、

「あんみつ130円」にもサエちゃんは興味を示したので、あんみつを2人前買ってサエちゃんに持たせた。






豪志がA型障碍者就労を退職することになって、ワタさんが毎日のように祝ってくれた。今日はラーメン、明日は南アフリカ料理、昨日はケバブといった具合に。

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