第2話
今思い出しても悔しくて涙が出る。
そう俺には全く魔力がなかった。0だったんだ。0。魔力量が少ない平民でも100はあると言われているこの世界でね。
ちなみに俺以外、先生や生徒たちは何万、何十万の世界だった。
魔力至上主義であるこの国では当然ながら王族が最高の魔力を有しているが、それでも1万、2万の世界だ。
召喚された中で99万と一番魔力量があったイケメン委員長は王族に買われたんじゃないかな。知らないけど。
そして極め付けがスキル。皆が強そうだったり便利そうなスキルを有していたのに対して、俺は【ファイア】【ウォーター】【ウインド】【ロック】【ライト】【ダーク】【アイス】【スタン】【ケア】【クリーン】【リペア】【ポーチ】というなぜか誰でも使える生活魔法がスキル化していただけのものだった。
【ファイア】火をつける
【ウォーター】水を出す
【ウインド】そよ風をおこす
【ロック】岩を出す
【ライト】光を出す
【ダーク】暗くする
【アイス】氷を出す
【スタン】気絶させる
【ケア】治療する
【クリーン】綺麗にする
【リペア】修理する
【ポーチ】財布程度の容量のアイテムボックス
こんな感じの効果らしいが消費する魔力量に対してその効果は小さく割に割に合わないらしい魔法というのが世間での認識。
司会進行役も「消費量が激しい魔法だが、君の場合はスキルだから魔力は使わないようですね。
まあ、でも生活魔法だからその効果はたかが知れてますがね、でもかなり珍しいケースですよ」と俺の心情を知ってか知らずか、にやにやしながら言いやがったのだ。
そんな俺を小馬鹿にしたような言い回しでも会場では爆笑の嵐だったけどね。
結局はいいように散々笑われ小馬鹿にされただけで誰からも買われず司会進行役が「もう結構ですよ」と言うまで会場ど真ん中でいい晒し者だったよ。
で、最後は奴隷商に売られ、隣の国までドナドナ。
でも救いはあったのだ。その理由は隣の国はマホマホ王国ほど魔力至上主義の国じゃないからだと奴隷商人が言ってくれ、しかも、マホマホ王国の王族や貴族が異常なくらいで、生活魔法を使い放題だったら隣の国では普通に優秀な人材として引っ張りだこになるだろうとうれしいことまで言ってくれた。
奴隷商人やってる奴なんて嫌なイメージしかなかったけど、結構、いやかなりいい奴だった。
食事も普通に貰えるし、他の奴隷に対してもムチを打ったり酷いこともしていない。
ただ自分自身に一日一回はクリーン魔法をかけろって命令はある。俺の場合はスキルだけどね。
お礼にケアスキルで薄くなった頭の毛を増やしてやったら驚かれた。生活魔法のケアじゃ増やせない光魔法のハイヒールは必要だとね。ちょっとはポイントが稼げたのではないだろうか。
隣の国に無事についた俺は、すぐに売られることなく、なぜか奴隷商で働かされた。といっても扱いはブラックじゃなくとてもホワイト。3食昼寝までついていて驚く。
お風呂はないけどクリーンスキルで足りるし、仕事も自分のスキルを使っておけばいい仕事。スキルって摩訶不思議だけどかなり便利。店内のクリーンから奴隷一人一人へのクリーン。
ここにいる奴隷たちは買いにきたお客様にアピールさせるために無駄な魔力を使わせたくないらしいから俺がクリーンスキルを使ってやらないといけないのだ。
というのもクリーン魔法は消費魔力が80くらいいるそうで、平民出の多い奴隷たちからすれば結構な負担になるらしいのだ。
あとケアスキル。これには俺もビビった。それは女性奴隷にケアスキルをかけた時だ。
その女性奴隷は元冒険者で馬車事故に巻き込まれて額に深い傷と左手は小指と薬指を失っていた。そう聞いていた。
クリーンスキルついでに、見るからに痛そうにしていたので軽い気持ちで少しでも治ればと思い軽い気持ちでケアスキルをつかってやったんだよ。
するとどうだ。女性奴隷が目を見開き突然巻かれていた包帯を外し始め、俺はなんだかヤバいことをしてしまったのかとオロオロしながら逃げ腰に、そうこうしている間に包帯を外し終えた女性奴隷の額には傷が全くなく、左手にも指が生えていた。もうね我が目を疑って何度も両目を擦ってしまったよ。
奴隷商人も泣きながら俺にお礼を言う女性奴隷に、何か問題でもあったのかと心配して駆け寄ってきて腰を抜かしていたな。
あとで奴隷商人に聞いた話によると、欠損回復魔法はパーフェクトヒールでしか治せないらしく、消費魔力は1万と言われていて使い手はかなり限られているそうだ。皆が驚くのも納得。
それから店内をリペアで修繕して奴隷にはケアスキルを使って感謝されて、いい気分になって、さらに修繕やケアスキルを使いまくっていたんだが、ある日奴隷商人から、女は好きか、と聞かれたからそりゃあ男だから当然だろ、って答えたのが不味かったのか……
つい一週間ほど前に俺は男娼として、この男娼館に連れて来られた。
奴隷商人ではなく仮面をつけた人に。
奴隷紋の主先をその仮面の人に代えられたからこの人がこの男娼館のオーナーなのだろう。
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