決闘騒ぎ

 王子との決闘?をするために中庭に移動した。


 正直に言おう今内心かなり焦っている。


 ミリアのことを守らなければと思って決闘に乗ってしまったのはいいものの良い落としどころが見つからないのだ。


 流石に安全のために練習用の木刀かつ魔法なしで試合をすることになったが問題は試合結果の方だ。


 例えば王子に惨敗してみるとする。

 

 その場合バカ王子はさらに調子に乗り事態は悪化。さらにイースル家の評判も落ちることとなるだろう。


 例えば王子に惜敗してみたとしよう。


 その場合もやはりバカ王子は調子に乗り事態は悪化。


 例えば王子に辛勝してみたとしよう。


 その場合あのバカ王子の事だ今のはまぐれだとか言い出すに違いない。


 例えば圧勝してみたとしよう。


 その場合は王家の人間をボコボコに叩きのめすことになってしまい今後のイースル家の立場を考えると余りいいものではない。


 そう取れる選択肢がないのである。


 しかしここである一つの見落としていた条件を思い出す。


 現在ここはパーティーの真っ最中。


 長時間の決闘はパーティー全体の流れに関わることになることは間違いない。


 つまりある程度の長さ続けたら時間切れで引き分けになるに違いなのだ。


 それに引き分けの場合はあのバカ王子もこっちの実力を認め、良いライバルだとか思って更生してくれる可能性がミリ単位である。


 いやナノ単位か?


 作戦も決まったので決闘の開始位置につき剣を構える。


 「雑魚が覚悟しとけよ!」

 

 金髪バカが何か言ってるが無視だ。


 「それでは試合開始」

 「おりゃぁ」


 試合開始の合図とともに王子は剣を大上段に振りかぶり、そのまま踏み込みとともに振り下ろし飛び込んでくる。


 正直に言おう確かにそれは威力が大事な対魔物には有効だ。

 

 しかし対人戦においては悪手でしかない。


 そんなことを思いながら半歩下がる。


 自分の元居た位置を剣先が通りすぎる。


 半歩下がっているので当たるわけがない。


 さてさっきの振り下ろしで最大の問題なのはこの後だ。


 思い切り振りかぶりすぎて振り切った後のスキが大きいのである。


 しかし、今回はそのすきを突くわけにはいかない、何故なら目指すのは引き分けだからである。


 さりとてこのまま攻撃しないのも変だろう。


 そう思いギリギリ防げるほど軽く攻撃する。


 相手は当然防げ...なかった。


 なんで?と思ったがなぜか王子の手には木刀がなかった。


 どうやら最初の一撃を放った時に勢い余って木刀が手を離れてしまったようである。


 おそらく今まで最初の一撃で決まっていたから外した時の経験がないのだろう。


 まぁ今はそんなことはどうでもいい。


 「えぇと、これは僕の勝でいいですか?」

 「いいわけねーだろーが!」

 

 審判がジャッチを下さないのでジャッチを促す意味も込めて聞いてみるとその瞬間何を思ったのかバカ王子が叫びながらがナイフを持って飛び込んできた。


 「岩よ!」


 ナイフを横っ飛びにかわし、そのまま岩魔法を使いバカ王子の足元に岩を生成する。


 魔法は禁止であったがもはやこの状況ではそのルールは効果を失っているだろう。


 そのまま顔に一発で木刀で打ち込む。


 すると王子は気を失った。まぁ気を失うようにやったので当然ではあるが。


 「さすがですヒース様。」

 「あぁ、ありがとうミリア」


 こうしてパーティーは幕を閉じた。


 幕を閉じたのは決闘だけじゃないのかって?

 

 残念ながこのパーティーの主役はあそこで伸びているバカ王子である。


 主役がいないので当然パーティーは終了だ。

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