第4話
その影の正体は元太君だった。彼は走ってきたのか膝を手で押さえて息を荒くさせている。
「おう、おまえら、やっぱりここおったんか!」
「元太君!大丈夫?」
「おう、大丈夫や。」
「元太、持ち前の体力だけでよくここまで逃げてこられたな。」
「ん?それ馬鹿にしてんのか!?」
「違う違う、馬鹿にしてるんじゃないよ。」
「そうか……それならええんやけど。」
「それより、おまえらもしかしてこの町で起きてる謎の異変について話してたんか?」
「そうだよ。」
僕たちだけで話し合っていた時、彼女が僕の服の裾を引っ張った。
「どうしたの?美鈴ちゃん。」
「ここに居たらバレるかもしれないから、中入ろうよ。」
「それもそうだね。」
僕たちは彼女の言う通り、大人に見つからないように秘密基地の中に入ることにした。見つからないよう辺りを確認しながら登る。全員が登り切り一安心した後、すぐに彼が話を再開した。
「よしまずはこれからどうやって生活するのか作戦を立てよう。みんな持ってきたものを全てここに出して。今は協力していかないといけないから。」
玲音君の言葉に続き、僕たちは自分のリュックを開け、持ってきたものを全て前に出した。
そこに並べられたのはお菓子と飲み物、財布のみだった。
「あれ、元太君は?」
「ごめん、俺荷物用意する暇なかったからさ……。持ってきてねぇわ。」
「まぁそうだよね。ずっと家にいたんだもんね。」
「うん、ごめん。」
「みんないくら持ってきた?」
僕と彼女は五百円、玲音君は二千円の所持金だった。これを四人で分け合っても数日しか過ごせない。
「……誰かがお金を家に取りに帰るしか方法はないのかもしれない。」
「どうやって取りに帰るんよ。大人はまだ外に沢山いるだろうし。取りになんて帰れんで。」
「とりあえず美鈴に行かせるわけにはいかない。僕たちの誰かが行こう。もちろん元太もね。」
「えぇ……。」
「君がこの中で一番体力あるんだから。」
「お、お前だってその頭があるなら行けよ!それに言い出しっぺだし。」
「僕は作戦をたてたいんだ。」
二人は相手を行かせたいからなのか自分が行きたくないのか言い合いをしていた。
「ぼ、僕行くよ!」
このまま喧嘩に発展させてもいけない。耐えられなくなった僕は口任せに発言していた。
「え? しゅういいの?危険だよ。」
「このまま誰も行かないわけにはいかないし。いつも頼りないから、こんな時くらいはみんなの役に立ちたい!」
「……わかった。それじゃあ頼むよ。」
「うん。」
こんな時でも喧嘩する二人を見るのが耐えられなくて名乗り出た。笑顔でそう言ったは良いものの、こんな重大なことが本当に僕に務まるのだろうか。それよりも恐怖が勝る。もう言ってしまったからには引き下がれない。でも後悔はしていない。
いつも役に立っていない僕が、こんな時くらいはみんなの役に立たないといけないんだ。
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