第20話 続いてきた後悔

 ブラウズに君は伝える事を決意する。

 ペンダントから伝わる思いをそのままに。


「は、はは……何だそれ。まるであいつと同じ事を言ってるじゃないか。クソッ、俺は何をやってるんだ。アッシュに八つ当たりまでして」


 ブラウズがそう言うと部屋の寒さが消えていた。

 何も気にしていないと君はブラウズに伝える。


「すまない。でも、どうしたらいいか分からないんだ。アンジェリカを失って何も……俺は……。教えてくれ、アンジェリカ! 俺はどうしたらいいんだ!」


 悲痛な声で問うブラウズに君は応えたいと思う。

 きっと何度も悩み、解決しない苦しみが続いていたのだろう。

 自然と君はペンダントを手にする。


 このペンダントにはアンジェリカの想い以外にも強い思念のような力を感じる。

 しかし、今はそんな事よりアンジェリカの想いを汲み取りたいと君は強く思った。


 だが、その思いに反して今回は何も聞こえてこなかった。

 何かを感じるものがあるのに、読み取れていない。

 だとするならば、君は考えなければならない。


 ブラウズはアンジェリカを思い出したくなかった。

 アンジェリカが全てだったと言ってもいい。


 だけど、それは間違っている。

 何故なら二人の間にはかけがえのない宝物があるからだ。

 君はシェルは大切なものではないのかと聞いた。


「大切な……大切な娘だ! だけど、シェルを見るとアンジェリカを思い出してしまう……向き合いたくても向き合えるはずがない!」


 寂しそうなシェルを思い出して、君は勢いのままに伝える。


 生きているのはシェルのほうで、アンジェリカは亡くなっている。

 前を向かなければ一生、お互いが傷つくだけだと。

 アンジェリカはそんな事を望んではいない。


 意思とは関係なく君の右手は、ブラウズの頬に添えられた。


「こうして手を添えて……私の事を忘れてと言ったのは……そういう事だったのか。俺がお前の事を忘れられずに引きずる事を分かっていたからなのか。俺は……何で……」


 ブラウズは声も上げずに叫んだ。

 いや、正確に言えばブラウズから音の無い「声」が君に伝わる。


 もうここにいる必要がないと部屋を出る。

 背にした部屋からはブラウズの慟哭の「声」が君の心に届いていた。

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