第2話 お兄さん、浩紀君、私たちと一緒に付き合ってくれない?
水着が一番似合う学校一の美少女――
朝のHR前に、彼女と出会い、ガッツリと誘惑されたのである。
以前から美少女だとは聞いていたが、思っていたよりも美少女であった。
今日初めて、夏芽先輩を目の前で見たのだ。
だからなのか、午前の授業中、先輩の水着姿ばかりが脳裏をよぎり、なかなか授業に集中できないのである。
今、午前の授業は三時限目を迎え、あと数分ほどで、お昼休みになるのだ。
あともう少しの辛抱である。
ここを乗り越えられれば、平穏な休み時間が訪れると、浩紀は必死に集中力を高めていた。
毎日、勉強をしているからだ。
しかし、ただ勉強をしているだけじゃない。
予習や復習までしているのだ。
その上、普段の生活態度もいいことから先生からの評価も高いのである。
こんな些細なことで、入学してからの今まで積み上げてきた努力を無駄にはしたくはなかった。
浩紀は黒板を見たり、机の上に置いたノートを見て、必要なことを書き記したりと、必死に真面目な姿勢を貫き通していたのだ。
刹那、チャイムが鳴る。
それと同時に、浩紀の体を支配していたモノが取り除かれたのだ。
はあぁ……やっと、解放された……。
浩紀はリラックスするかのように、机にシャープペンを置き、クラスメイトらと共に、授業終わりの挨拶をした後、背伸びをしたのである。
午前の授業が終わると、クラスの半分は、どこかへと行く。
弁当を中庭で食べる人。
学食に行く人。
それ以外の理由でも、教室の外に行く人は多分いるはずだ。
浩紀は特に動くことはしなかった。
無駄に行動しても時間の無駄だと感じているからだ。
故に、事前に弁当は用意している。
自販機にも行かないように、飲み物も朝、コンビニで購入していた。
浩紀は授業で利用した道具を片付け、通学用のリュックから、弁当と飲み物を取り出す。
教室内だと少々騒がしいものの、今日は教室の中でも一番うるさいとされる陽キャはいないのだ。
普段通りに弁当を食べようとする。
が、何か、違和感を覚えた。
誰かが近づいてくる気配を感じたからである。
「ねえ、浩紀君? 食事中にごめんね、今、ちょっといいかな?」
話しかけてきたのは、クラスメイトでもある、黒髪ロングヘアな幼馴染、
「なにかな?」
浩紀は手にしていた箸を机の上に再び起き、彼女の方へと視線を向けた。
「私ね、ちょっと、お話したいことがあって」
「話し、か……今じゃないとダメなこと?」
「うん」
夢は丁寧に頷いた。
「おい、いいじゃんか、誘われてんだぜ、行って来いよ」
「――ッ」
背後からは、友人の
彼は、迷わず行けよ、といった視線を向けていた。
ここは、潔く夢の誘いに乗った方がいいのかもしれない。
友人は何か視線で合図している。
察しろということなのだろう。
浩紀は席から立ち上がり、友人には行ってくるからと一言告げ、夢と共に教室を後にすることになった。
「ねえ、聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「いいけど……というか、どうして、友奈もいるんだ?」
学校の校舎裏。
浩紀はそこに設置されたベンチに座っていた。
その正面には、夢と、妹の
夢と一緒に話をするものだと思ってばかりいた。
だから、校舎裏に、ツインテールがトレードマークな友奈がいたことに驚いてしまったのだ。
「私からも、お兄さんにはハッキリとしておきたいことがあるんです」
友奈も食い気味に距離を詰めてくる。
幼馴染の夢もグッと近づいてくるのだ。
「ちょ、ちょっとどうした?」
碧音はベンチに座ったまま、動揺してしまう。
三人しかいない校舎裏。
だから、今のところ誰にも見られる心配もなく、普通に堂々としていればいい。
けれど、今まで距離感が遠くもなく近くもなく、普通の関係性だった二人から急に言い寄られているのだ。
対応に困り、なんて返答すればいいのかわからないのである。
「お兄さん、今日、夏芽先輩から告白されたって本当なんですか?」
「私もそれ、気になってたんです。どうなの? 浩紀君」
「ちょっと、いきなり……そんな質問?」
今日の朝、スクール水着が似合う美少女でかつ、爆乳な先輩から話しかけられたのは本当の事である。
「お兄さんッ」
「浩紀君ッ」
「そ、それは、まあ、告白みたいなことはされたけど。正式に告白されたわけじゃないんだけど」
浩紀は今知りえている範囲で話し始めた。
「では、お兄さんは、夏芽先輩とは恋人同士ではないと」
「そうなんですか? 浩紀君」
「そ、そうだよ。先輩とは全然、恋人同士じゃないんだ」
浩紀は返答した。
すると、視界に映る二人の美少女は胸を撫でおろす。すると、ベンチに座っていた浩紀の両隣に、二人の美少女は腰を下ろしたのだ。
「でしたら、浩紀君」
「お兄さん」
「「私と一緒にどうですか?」」
んッ⁉
浩紀は双方から聞こえる声に、ビクッと体を反応させた。
一旦、彼女からの問いかけが終わったと思いきや、双方の腕に接触する、とある暖かい二つの膨らみ。
ストレートに言えば、おっぱいである。
今度は、その膨らみに圧倒されることになりそうだと、本能的に察したのだ。
「私……お兄さんと付き合ってみたいんです」
「わ、私も……浩紀君と付き合いたいっていうか。普通に友達以上の関係として」
二人はいつにもなく積極的である。
妹の友奈は、普段からしっかりとしているのだ。だからこそ、急に恋愛的な意味合いで誘われるとは思ってもみなかった。
それに、幼馴染の夢。
彼女とは単なる幼馴染の関係だと思っていたのだが、意外にも両想いなのだろうか?
夢の口から告白ではなく、友達以上としてしか言われていないのだ。
モヤッとするセリフに、浩紀は戸惑う。
これって、遠回しに告白されているのか?
それとも、幼馴染として、もう少し昔のように遊びたいということなのだろうか?
浩紀は迷い、下手な返答をしてしまえば、幼馴染としての関係が崩れてしまいそうで怖かった。
だから、浩紀からは踏み切ったセリフを口にすることはしなかったのだ。
浩紀は付き合うだけならと、双方にいる二人に返答したのである。
「じゃあ、今日の放課後から、一緒に街中に行かない? 夢姉さんも一緒に」
「いいよ。じゃあ、浩紀君もそれでいい?」
「あ、ああ……」
変な感じの返答の仕方になってしまった。
双方から伝わってくるおっぱい。
夢のおっぱいがデカいというのは、以前から何となくわかっていた。
が、妹の友奈の胸の膨らみが想像よりもデカく感じたのだ。
制服からでも、膨らみ具合を堪能できるということは、実際、相当デカい?
隠れ巨乳タイプなのか?
いや、実の妹に対して、そんな感情を抱くなんて、あ、ありえないだろ。
浩紀は必死に嫌らしい感情を抑えきっていたのだ。
浩紀はあくまで真面目なのである。
真面目で優等生という名目で、学校では通っているのだ。
だから、おっぱいを感じたとしても、無心で何とか乗り越えるしかない。
「お兄さん」
「浩紀君」
双方からの問いかけに、さらに制服越しにおっぱいの厚みを感じるのである。
今日一日で、予想外な出来事ばかりである。
勉強のように決まりきったことだけじゃない。
人生とは、改めて、イレギュラーだらけなのだと痛感した日であった。
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