「雨、上がる」

ろわぬ

一つめの雨 「縁(えにし)」

「(雨か—————)」


「おいっ!? 征四郎くんっ!?」


「善波さん˛˛˛˛˛!」


「とりあえず、荷物をクルーザーから降ろして


 さっさと、ここから移動しよう!」


"ビュォォォオオオオオオオオオ....˛ཬ˛ཬ˛ཬ˛ཬ˛ཬ˛ཬ"


「(・・・・・)」


征四郎が、善波の言葉に降り立った島の砂浜の上で空を見上げると、


暗い空から島の上にいる征四郎 善波に向けて無数の雨粒が


降り注いできている


「セイシロウッ!?」


「┈┈┈∙∙∙ジャン...」


「"ミヤビ"は、どうするノッ?」


"ガタッ ガタタッ!"


「(雅————...)」


「か、カゼつよいネッ! ふ、フネ流されちゃうヨっ!?」


「アンカーはっ!?」


「… … …エッ!?」


「船をもっと陸に寄せろ! 流されるぞっ!?」


「あ、ああ、ウン————— !」


"ガチャッ ガタタッ!"


善波の褪せた様子に、ジャンは船の先にあるアンカーを取り出す!


「せ、セイシロウッ!? ミヤビ、見ててヨッ!」


「・・・・・!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


叶生野荘、尚佐邸———————


「ガチャ」


「ああ、征四郎くんか」


「 ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ 」


「まったく...雅のヤツ 一体どうなっちまったって言うんだ...?」


「  ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ 」


"カッ カッ カッ カッ....˛ཬ˛ཬ˛ཬ˛ཬ˛ཬ˛ཬ"


部屋の中程にいる男の言葉を聞いて、征四郎は部屋の中央のベッドの


脇に置かれた椅子に腰掛けている 善波 の元まで歩いて行く


「まったく┈┈┈∙∙∙∙ !」


「(_________雅.. ... ..)」


「どうやら、あの御代の一件以来、雅のヤツ、様子が


 おかしくなっちまったみたいだが....」


「("御代"_____________)」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


"アハハハハハハハッ!"


"アハハッ!"


御代の座に前代である叶生野 尚佐の長男、叶生野 善波が就く事が決まり


征四郎はそろそろ自分の会社があるアメリカに引き返そうと思い、


数日過ごした叶生野荘を離れるため荷物をまとめていると、部屋の外から


喧(けたたま)しい叫び声の様な笑い声が聞こえてくる


「(ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ   !)」


とっさに手にしていたスーツケースを机の脇に置くと、征四郎は


部屋から外へと出る


「—————アハハッ! アハハハッッ!?」


「せ、征四郎っ!?」


「アハハッ! アハハハッ!?」


「正之....」


部屋から外に出るとそこには、叶生野家の次男である


"叶生野 正之"


「アハハッ! __________アハハハハッ!?」


そして、つい先日まで御代の座を争っていた


"羽賀野 雅" 


の姿が見える....!


「ど、どうしたってんだ? 雅の奴!?」


「"ミダイ"!? "実子"!?


 それがどうしたって言うのっ┈┈┈∙∙∙∙!?」


"ダンッ ダンッ!!"


「ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ   !」


雅は、髪を振り乱しながら肌が見えかけている軽く汚れた服のまま、


通路に置かれた絵画や調度品に向かって乱然と取り乱す


「ど、どうしたってんだ————? 雅のヤツ....!?」


「  .. .. .. .. 」


"ガシャァアンッ!"


「ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ  !」


"ガチャンッ!"


"ガチャンッ!"


「(┈┈┈┈…、!)」


何事かと思い、周りの様子に目を向けると正之が


訳の分からない表情を浮かべながら声を上げる___________


「実は....!」


"ガチャァンッ"


通路で激しく取り乱している雅の様子を覗う様に見ると、


正之は征四郎の方に向き直る


「この間の'御代'の一件以来___________ 」


"ガチャンッ!"


「み、雅様… … …っ!?」


周りを取り囲んでいた何人かの執事が、腫物(はれもの)を触る様に


雅の周りへと群がる


"ガシャァァァンッ"


「み、雅さまっ!?」


「よっぽど、あの御代の一件が効いたんだろうな˛˛˛˛˛」


「  ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ 」


「雅は、あれから、少し様子が___________」


「"様子"が… … …?」


"ガシャァンッ!!"


"ガシャンッ!!"


「アハハッ!? "御代"ッ!?  みだいっっ 


 ミダイミダイミダイミダイ————っ!!」


「  _____________」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「結局、あの後、雅は倒れて、それから目を覚まさないままだ… … …!」


「  ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ 」


「スゥ  スゥゥウウ..」


「(  ____________)」


善波の言葉を聞きながら、征四郎は自分が座っている椅子の


横に置かれているベッドの上で寝息を立てている雅に目を向ける


「 ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ 」


"スッ"


「う、ぅう...」


雅の額の前に軽く手を当てると、その額にかかっていた前髪を


征四郎はそっと上にあげる____________


「(—————....)」


「 .. . ... .. 」

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