「勇者」


 何度繰り返しても、決して変わらない未来がある。

 俺はそんなことは信じない。

 決まった未来などない。

 選択肢は無限であり、未来は決して一つではない。

 そう信じてきた。そして、これからもそうであると信じている。

 しかし、彼女の「死」は避けられない。

 何度時間を戻し、この世界をやり直そうとも、彼女の「死」を回避することができない。

 俺は諦めない。

 何度、この時間を繰り返そうとも、俺は…

 彼女を救ってみせるんだ!



「ロンよりショウコ」


ロン「だあああああ、まただああ」


ショウコ「どうしたんですか」


ロン「このゲーム、いつもここでバグるんだよ」


ショウコ「どこです?」


ロン「ラストボスのここだよ。ストーリーでは最終戦の前にお姫様が殺されてしまうんだ」


ショウコ「それからどうなるんですか」


ロン「攻略本では、姫様を殺されて、悲しみに打ちひしがれながらも勇者は悪の魔王を倒すんだ。そして、エンディングでお姫様は勇者の愛の力で蘇る…はずなんだけど」


ショウコ「バグって前に進めない?」


ロン「そうなんだ。お姫様が殺された瞬間に、ゲームが止まってしまって、またセーブポイントから…ラストボスとの最終戦からやり直しさ…」


ショウコ「お姫様、蘇らせたいですね」


ロン「そうなんだけどね。どうしてもバグって最初からになってしまうんだよね」

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