第9話 相思相愛なのに…

ある日の事だった。



「沙夜華お嬢様」



私の部屋に訪れる眞那斗。



「眞那斗」



私の手を取る。



ドキン



「少し、お時間良いですか?」

「良いけど…」



そのまま手を繋ぎ一階へと向かう。


向かった先はピアノのある部屋だった。




私をソファーに座らせ、眞那斗はピアノの前に行き腰をおろす。




「あなたに、この曲をプレゼント致します」

「えっ?」




ピアノを弾き始める。




しばらくして──────





「本当は、もう少し早く、あなたに、お聴かせしたかったのですが遅くなりました」


「いいえ。そんな…ねえ眞那斗」

「はい?何でしょう?」

「もう一曲お願い出来ますか?」

「良いですよ」

「あの曲を聴かせて下さい。確か…タイトルは『想い出の中で』」

「分かりました」




そして私が初めて眞那斗が弾いていた曲を耳にした時の曲をリクエストした。


私は眞那斗に歩み寄り頬にキスをした。



「ありが…」



グイッと引き寄せられ言い終える前にキスで唇を塞がれた。



ドキッ


驚くと同時に胸が大きく跳ねる。




「物足りないですか?」

「ち、違っ!…驚いただ…」



再びキスをされる。



「……………」




「沙夜華…」



ドキン



「眞那斗…」




再びキスをされ深いキスをされる。


初めての事に私は戸惑う。


再びキスをされ首筋に唇が這う中、胸辺りにチクリと軽く痛みがはしる。




「眞那斗…今…何か」

「後で見てみな」



そして再びキスをし私の前から去る。





その日の夜────



「お嬢様、起きてますか?」



私は眞那斗を部屋に入れる。



「眞那斗?どうかした?」

「さっきの見てみましたか?」

「さっきの?」

「はい」




私は記憶を辿る。



「あっ!」



私は洋服を脱ぎ始める。



「馬鹿っ!いきなり脱ぐな!」

「えっ?あっ…ゴメン…」

「全く…」



私は背を向ける。



胸元に赤くなってるのが分かった。



「…赤くなってる…」



フワリと背後から抱きしめられた。



ドキン…




「キスマークってやつですよ」

「えっ?キスマーク?」


「お嬢様は特別な人ですから印付けておきました。しばらくしたら消えてしまいますけど」



私は振り返り向き合う私達。


私達はキスをし抱きしめ合う。





数日後─────




「えー、悲しい事に飛比谷が転校する事になった」




ガヤガヤ…



ザワザワ…



騒々しくなるクラス。




「急な事だから、みんなには挨拶出来ないままで申し訳ない思い含め挨拶はしないまま行くとの事だ」





ガタッ


私は席を立ち教室を飛び出した。



「あっ!こらっ!賀須日っ!待ちなさいっ!」






眞那斗……




あなたは……




そのつもりだったの……?









曲を


プレゼントしてくれたり




私に沢山


愛情注いでくれてたのは




別離(わかれ)が目前に


迫っていたから……?






私はタクシーをひろい乗り込む。




「羽田までお願いします」

「はい」





国内線?



国外線?



何も情報がないまま……






私に何も言わずに



私の前から突然いなくなるあなた




一言 言ってくれても



良かったのに─────








♪♪♪~……



私の携帯に着信が入る。




「…公衆……電話……」




ピッ

携帯に出る。





「…もしもし」

「お嬢様」




ドキン



「眞那斗…?…どうし…て…?突然過ぎだよ!!一言言ってくれても…ねえ、今、何処!?」




「………………」



「ねえっ!眞那…」




『成田発…』




アナウンスが聞こえてきた。




「成田……?眞那斗…今…成田空港にいるの?ねえっ!眞那斗っ!」


「お元気で…」




プツ……



プー……



プー……






電話は切れる。




「眞那斗っ!眞那斗っ!すみませんっ!成田に行き先変更して下さい!」


「今からですか?」


「お願いします!どうしても最後に会いたい人がいるから」


「分かりました」





そして成田空港に向かう。




「…眞那斗…眞那斗っ!眞那斗ーーーっ!」



「……………」



「…あなたに…伝えなきゃいけない事があったのに…」




私は探し回る。




「眞那斗ーーーっ!」




背後から抱きしめられた。



「大きい声で」




ドキン


胸が大きく跳ねる。




「叫んでどうされたんですか?お嬢様。今は学校の時間ではないですか?」



「…眞那斗…」


「学校をサボるなんて、らしくないですね。お嬢様」


「…だって…」




私達は向き合う。




「……………」



「…どうして…?」

「えっ?」


「どうして黙って行くの?一言、言ってくれても良かったでしょう?」


「あなたに最後に会ってしまうと行き辛くなるから何も言わなかったんですよ」


「眞那斗…だったら…行かなきゃ…」


「…出来ません…」





ズキン



「…眞那斗…」

「今日までありがとうございました。最後は笑顔で……」




私はキスをした。




「公衆の前で大胆ですね」

「…仕方ないでしょう?体が勝手に…」

「体が勝手にとは…大胆な発言ですね」



眞那斗はクスクス笑いながら言う。



「もうっ!本当、意地悪なんだから!」


「それには、ちゃんと理由がありますから」


「理由?」


「そうです。それじゃ、行きますね」


「待って!眞那斗…こちらこそ、ありがとう…さようなら…お元気で…」


「…お嬢様も…」




離れ始める私達。




「飛比谷眞那斗!私から…もう1つ…あなたに言わせて下さい…」

「何ですか?賀須日沙夜華お嬢様」

「…あなたを……愛しています…」




「………………」



「…とうとう言ってしまいましたね。何の為に口封じしたんだか…」


「…眞那斗…」


「…それじゃ…」




眞那斗は去り始める。




「眞那斗っ!」









『行かないで!』



そう言いたかった



だけど・・・・・






「眞那斗ーーーーっ」





私は大粒の涙がこぼれる。







「必ず…また…戻って来るよ。沙夜華。…俺も君を愛しているから…」




俺は彼女への想いを自分の中に留めていた。





そんな事など知るよしもない私。






本当は相思相愛なのに




選んだ道は別離(わかれ)だった



























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