夜来化石 ~遊郭に残された謎の四字に秘められた意味は?齢九歳にして天下一の盗賊と噂される俺は、盗みと女装なら誰にも負けねえっ!(「ウチの親方が一番かわいい」手下A・談)~

綾森れん@5月26日👑新連載開始

とある男の前口上

 時は未来――


 と言いましても、百年や二百年では御座いませぬ。これは一千年も先の世の物語なんで御座りまする。


 一千年と申しますと、この世も変わるもの、民主主義だの社会主義だのという政治思想は、とっくの昔に滅びちまいましたし、いやはや、地球を汚すばかりの科学技術も大方は消え去って、遺伝子技術のたまものか、ヒトの種さえ、平成の世とは多分に異なりまする。なにせ、首以外はとったりはずしたり自由自在なんですぜ、旦那。今じゃあ到底考えられねえ赤い目や金の目をした人間もうようよいるし、ここは地獄か魔境の地か。


 いやいや旦那、この時代じゃあこれが当たりめぇ。地球のどっかの国の、平和な日常なんでさあ。


 てまえが今から紹介致しまするは、天下一とたたえられた盗み屋と修理屋の物語。盗み屋と申しましても、小判大判宝玉のたぐいなんざりゃしねえ、盗むのは人の体――、そう先程も申しましたとおり、この時代は、指も手足も取り外し可能なんでさあ。盗ったもんは病人、老人の移植用やら、美容整形用やら、高ぁく売れるんで御座いやすよ。


 ちなみに修理屋てぇなあ、平成の世で言やあ医者みてぇなもんでさあね。


 始まりは、まだ若ぇ男女のいろごとの場面から。


 おやおやそこのあんちゃん、そんな嬉しそうな顔するもんじゃねえですぜ。


 おっと買い物帰りのねえちゃんも、あめ玉しゃぶったそこンガキも、魂だけのばあちゃんも、寄ってらっしゃい見てらっしゃい、楽しい楽しい未来絵巻の始まりでぃっ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る