愛子はアイドル

羽造 泰

第1話 変えたい!

吉田愛子、中学3年生。サラサラ黒髪がチャームポイント。


小学生の時は何不自由なく過ごしてきたが、現在友達0人。いわゆるボッチである。内気でいつも一人。優しいことが取り柄であるが、いかんせん人と話すことが苦手なため誰からも気づいてもらえない。勉強も運動も中の下で側からみれば冴えない少女である。


そんな愛子の唯一の生き甲斐、それが「アイドル」である。

テレビに映るキラキラしたアイドルに憧れて、いつか自分もあんなふうになりたいと強く願っているのだ。

しかし、現実はそう甘くはない。画面の奥にいるのは自分とは程遠いカワイイ子ばかりである。


中学3年生も終わりに差し掛かっていた。

そんな時一つのCMを目にした。

「新アイドルグループオーディション開催決定!!」

愛子はその言葉に目を奪われてしまった。

「これは変われるチャンスかもしれない・・・」そう思った時には指がサイトを開いていた。


審査内容を見ていると最初は写真で審査される。顔のアップと全身の写真。たった2枚の写真で簡単に判断されてしまうのだ。


しかし、今やアイドルは日本のメインカルチャーであり、影響力は絶大。全国からアイドルになりたい女子がこぞって応募するのだ。

愛子は一張羅のワンピースを着て

「お母さん、写真撮って!!」とドタバタと階段を降りる。


母親は娘がいきなり写真を撮ってと迫ってきたため少し驚いたが、娘のあまりにイキイキとした目を見て何事がすぐに理解した。


写真を撮り終えると勢いで応募し、上機嫌になる愛子。流れるように応募を済ませた愛子だったが、ここで重要なことを思い出した。それは、自分の強みが分からないことである。


アイドルとはいかに他人と被らないかが勝負。剣道少女・帰国子女・歌姫。様々な個性を持った人物こそがアイドルとして生き抜く最低条件なのである。


しかし、愛子にはそれが分からない。この先あるであろう歌唱審査やダンス、特技披露などたくさんの場面で愛子という人間を大人たちに見せなければならないのだ。


今まではアイドルオタクの目線でアイドルの苦労を見てきた。それで分かりきっていたのだ。いざ自分がそちら側に回ろうとした時こんなにも難しいことだとは思いもしなかった。


まだ誰にも話していないのに、一人で膝から崩れ落ちた愛子だった。

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