それでは皆さんご一緒に?レッツサモン!!

ここ数年でカードバトルアニメの沼に嵌った者です。
物事のほとんどがカードバトルで決まるアニメって面白いな!けど・・・このホビーアニメの世界に一般の感性を持った現代人が入り込んだらどうなるんだろう・・・という妄想を常々していた自分には正にぶっ刺さる作品。

主人公、影薄サチコはいつの間にかカードゲーム至上主義のアニメのような世界に来てしまった元現代社会人の記憶を持った転生者。
しかし前世の記憶はあるものの死んだ記憶もなく、カードゲームなどやったことがないしカードゲーム系のアニメも観たことがない。
前世の生活や転生の瞬間などの冗長な前置きがなく、この世界に転生して11年間過ごした時点から物語がスッと始まるのは読者にとって嬉しい所です。

まず前提として置きたいのは、影薄サチコはこの小説の主人公ではあるがこの世界の主人公ではないという事。
この世界には晴後タイヨウという正にキッズアニメの正統派熱血主人公が存在しており、サチコという脇役視点から見た世界というのがこの小説です。

では影薄サチコは単なるモブなのかと言われるとそうではない。
彼女は貧富の差もカードゲームで決まってしまう厳しい世界に順応するために強くなった、クール系ミステリアス美少女というアニメレギュラー並のメインキャラなのです。影薄とかいう逆名前負け名字返上しろ。
ただしクール系美少女というのは外見だけの話で、心の中ではこの世界に対するツッコミの嵐で吹き荒れていますが・・・そのツッコミがまあ~面白い。
現実ではツッコミが入るようなホビーアニメ特有のトンデモ展開が連続するのですが、視聴者の心を代弁してくれるかのような読者と同じメタ視点を持ったサチコの怒涛のツッコミに清々しさを感じ共感が止まりません。

しかしそのトンデモ展開にもちゃんと理由づけされているのが凄い。
カードバトルで人が吹っ飛ぶのには理由がある!モンスターが実体化してリアルファイトするのにも理由がある!嘘だろ・・・ただのギャグだと思っていたあのシーン伏線だったのかよ・・・という展開がバンバン出てくる。
ホビーアニメの特徴を掴みつつ、深堀した作品というのがこの小説の印象です。子供向けアニメだと思って楽しんで観ていたら、いきなり重厚で複雑なストーリーや重い展開が出て来て沼に嵌る。
これ絶対夕方ゴールデンタイムに放送する内容じゃねぇだろ・・・っていうのもホビーアニメあるあるかも?

この小説のメインはカードバトルですが、ルール自体も思ったより難しくなく、なんと冒頭の10行の400字程の説明で終わる程度。相手のモンスターを全て倒したら勝ちというシンプルなものです。
ルールはシンプルで分かりやすい・・・しかしそれゆえに奥が深い!
出せるモンスターの数は限られているので、プレイヤーはどうにかして自分のモンスターを守ったり相手のモンスターを倒そうとする。
多彩な補助や妨害カード、コスト管理と相手の手札やスキルの読み合い、ピンチからの大逆転などカードバトルアニメならではの熱い展開に心が躍ります。

しかし、カードゲームに馴染みのない人や、ホビーアニメを観たことない人にはルールやバトル部分が理解しづらいかもしれない・・・。
でも大丈夫!
何故なら自分も1読目はルールやバトル部分は理解せず流し読みしていたからです。
それでも読む手が全く止まらなかったのは、この小説の魅力がカードバトルだけではないからでしょう。
タグにある通り、この小説の3分の1くらいあるリアルファイトのおかげで飽きが来ませんし、キャラクター達とストーリーも魅力的です。

熱血主人公、幼馴染ヒロイン、おホモだち枠、中二病感溢れるライバル、激重感情先輩・・・字面だけ見ると敬遠したくなるようなキャラクターが勢ぞろい。主要登場人物から敵キャラ、モブにいたるまでどいつもこいつもキャラが濃すぎる。
だけど読み進めていくと、どんどん彼らの魅力的な側面が溢れて出て来ます。
どのくらいかというと、影薄サチコもその周りのキャラも強キャラ過ぎて、こいつらをどう組み合わせて大会に出してもドリームチームが完成してしまう・・・それくらい魅力的なキャラばかりです。

そんな彼らを取り巻くストーリーと世界の陰謀・・・
カードバトルは難しいと敬遠せず、ぜひお気に入りの勝利BGMを流しながらお読みください。