第15話

「はぁ……ったく、何で俺がこんな事」



俺はあの後、何故か大きいゴミ袋を二つも両手に持ち、廊下を歩いていた。



というのも未央音が教室から出て行って直ぐに教師が教室へとやって来て何故か手にしていたゴミ袋二つを偶然目に入った俺に職員会議があるからと押し付けて行ったからだ。



未央音に待っているようにと念押しされていたから勿論断ろうとしたが、その間もなくその教師は職員室へと戻って行き、未央音が出て行った直後と言う事を考慮して今は仕方なくゴミを出す為に校舎裏へと向かっている所だった。



「……結構重いなこれ」



黒い大きなゴミ袋を一度地面に置き、外に出る為靴を履き替える。



「…早く戻らないと……未央音に怒られ…」



早くゴミ捨てを終わらせる為、早足で校舎の側面の角を曲がろとした時だった。



「………………ん」



文句を言いながら歩く俺の耳に自分と違う声が紛れ込む。



「……………ん!………」



気のせいだと歩きだそうとすると、今度は自分の後方から声が聞こえた。



「…さん!……」



「……迩……冷迩!」



明らかに自分を呼ぶ声、その方向に目を向けると校舎に隣接された植木の隙間から自分目掛けて腕が2本伸びて来ていた。



「…うわっ!?」



驚いた時にはもう遅く、その伸びた腕は俺をその植木の隙間へと引きずり込んだ。



「……痛っ………!?……六炉!?一葉!?お前等こんな所で何して……!」



「「シーっ!!」」



引きずり込んだ犯人が分かり、冷迩が驚きの表情で二人を見ると、二人は口の前で人差し指を立てていた。



「…こんな所で何してんだよ」



声の音量を下げ植木に潜む二人に隠れてる理由を聞くと、二人は無言で前方を指差していた。



二人に促され、植木の隙間から指定された箇所へと視線を向けると、そこには一人の女子生徒と一人の男子生徒が4m程の距離を開け、向かい合うようにして立っていた。




「……一人は私のクラスの男子ですわね」



一葉はその男子生徒を確認すると、爪を噛み、理不尽な憎悪を込めた視線で男子生徒を見ていた。



「……ってあれ?もう片方は未央音か」



女子生徒をよく見てみるとそこに立っているのは未央音だった。



「…えっ?反応薄くない!?」



ぎこちない様子で向き合う二人、人気のない校舎裏、俺はどうやら未央音が告白される場面に出くわしてしまったらしい。



未央音が言わなかったのはきっと相手の事を思ってなんだと思うと、教室でのあの反応も合点がいく。



「反応薄いって言われてもな……」



正直未央音が告白されている現場を見るのはこれが初めてじゃない、未央音は十分魅力的だと思うし、告白する男子がいるのだってそんなに疑問を抱くような事じゃない。



「逆に一葉は何でそんな怒ってんだよ」




「当たり前ですわ!全く……何の為に未央のファンクラブを男子禁制にしたと思ってますの」



何が当たり前なのかはよく分からないが、どうやら一葉はやきもちを妬いているらしい。



「そんなに怒らなくても、未央音は断ると思うぞ」



勇気を持って告白している男子には悪いが、未央音から恋愛について悩んでいると言った話しは聞いた事もないし、現に今まで告白を受けても未央音は断り続けている。



「あんまり人の告白を盗み見るものじゃないし、行こうぜ」



それよりも今気にするべきは告白しようとしている男子生徒の方、結果が分かっている以上此所に居続けるのはあんまり気分がいいものじゃない。



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