第2話

「……こ…おぉ」



予想もしていなかったその事態に思わず口からそんな言葉が漏れる、布団の中で視認した『それ』とは生足ならぬ生尻ならぬ『生肩』……つまり自分の隣で寝ている人物の肩……素肌が見えていた。



「…………………」



普通に服着てたらそんな肩見える事ある?




そんな無防備な姿を見たせいなのか心臓に突如エンジンでも掛かったかのように、ドクンドクンと鼓動が胸を打つ。



考えられるのは二つ、一つは衣服を着ているものの、寝相によってはだけてしまっているという事、もう一つは見たまんま全裸……だが…



俺は隣で眠る人物をお互いに良く知っている、彼女の性格から考えて布団に潜り込んで来る事があっても全裸で侵入する事はまずあり得ないと言っていい。



「…………ん……」



刹那、彼女がもぞもぞと身体を動かすと毛糸の衣類が布団の端から顔を覗かせた、自分の読みは両方外れたものの、どうやら彼女はオフショルダーの水色のニットを着ているようだ。



「……………は!!?……」



安堵していたのも束の間、再びゆっくりと足で布団を下ろしてゆくと裸じゃない事の確認が出来たにも関わらず先ほどより大きく心臓が脈を打った。



それもその筈、布団を彼女の腹部まで下ろすとあろう事か自分の右手ががっつりと彼女の着ているニットの中に侵入していた。



唯一胸を撫で下ろした点は自分の手が彼女の胸まで到達していなくて腹部に触れているという事だろうか、寝ながらもそこまで手を伸ばさなかった自分に拍手を送りたい、いや……駄目か、自分自身でフォロー入れてみたけど女の子の服の中に手を入れてる時点で普通にアウトだこれ。




「……やばいなこれは…」



その思いとは裏腹にその事実を『見た』事によって視覚からの情報が手に伝わる感触を昇華させる。



すべすべで柔らかい…掌から伝わる高い体温……ずっと触れていたいというよこしまな心が耳元で囁いてる気がした。



そんな心に相対するのは我等が理性、寝ている女の子の服に手を入れているなど言語道断、今すぐやめろと揺れ動く天秤の上に重りを乗せる。



理性などどこ吹く風でよこしまな心は、なんなら太ももの間に手とか入れちゃえばいいんじゃね?とクソな提案を迷いなくして来る。



その後も欲にまみれた提案をポイポイと天秤の上に乗せて行く邪な心だったが、ここで理性がドデカイ反撃に出る。



『嫌われるぞ?』



理性が特大の重りを空から投下するとその衝撃で邪な心は一瞬で吹っ飛ばされて星となり、消えて行った。



そう、いくら彼女に触れられる事を幸福に感じようと、それが彼女に嫌われてしまう原因になってしまうのなら迷うという選択肢すら消し飛ぶ、自分にとって彼女に嫌われると言うのはそういう事だ。



「……よし」



迷いが消え、ゆっくりとニットの中から手を出して行く……




「………んんっ」



「!!?」



しかし自分の手と彼女の肌が擦れると、彼女は唐突に甘い声を出した。



「……………………」



「……………………」




吹っ飛ばされたよこしまな心が遠くで手を振っている。



お前ちょっともう黙ってろよ!!

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