第15話 幼なじみの転生は気付けない(15) SIDE マリー

SIDE マリー


 勇者さん探しは思ったより難航した。

 酒場の次に訪れたのはギルドだ。


「勇者さん? 最近見てませんね。また街の外で寝ずに戦っているんじゃないでしょうか」


 受付嬢さんがそう教えてくれた。


「寝ずにって……冒険者ってそういうものなんですか?」

「まさか。普通はパーティを組んで、危険をさけつつ行う物ですよ。ソロで昼夜問わず狩り続けるなんて、過去の勇者さんでもできなかったことです。最近は手伝ってくれる魔道士さんと一緒にいるところも見ますけど」

「大丈夫なんですかそれ……?」


 転生前は仕事で徹夜をしたこともあったが、一晩が限界だった。

 命がけの戦いでそんなことをして、事故ったりするんじゃ?


「大丈夫じゃないですよ。ちょっと最近事件があって、無理されてるんですよね。さすがにそろそろ戻って来ると思いますが」


 この人は勇者さんと仲がいいんだろうな。

 あまり本心を表に出さないタイプみたいだけど、その営業スマイルの裏に本気での心配がちらちら見え隠れする。


「事件って?」

「それはここではちょっと……」


 そこまで言いにくそうにするって……もしかして私のせいだったり?

 きっとそうだよねえ……。


「ところであなた、冒険者登録はされていないようですが、勇者さんとはどういったご関係ですか?」


 受付嬢さんが疑わしげな目を向けてくる。

 ううん、これは私を疑っているわけじゃないのかも。

 ライバルをけん制する目だ。

 勇者さんってモテるんだなあ。


「いえ、なんでもないんです。ありがとうございました」


 私はそそくさとギルドを出た。

 他人の色恋に巻き込まれても、ロクなことがないしね。


 戦う術を持たない私が、いきなり街を出るのは危険だろう。

 勇者さんのことは気になるけど、まずはもう少し街を見て回ろうと思ったところで、チャンスはやってきた。


 私はいつの間にか狭い路地へと迷い込んでいた。

 その先に、四人組に絡まれている勇者さんを見つけたのだ。

 路地の角に身を隠した私は、大きくいきを吸った。

 一度でいいからやってみたかったんだよね!


 せーの!


「警備兵さんこっちです!」


 よし! これで、からんでいる人達は逃げていくはず!

 残された勇者さんにしっかり恩を売っておけば、今度こそ好感度アップ間違いなし!


 そろそろ逃げたかなっと……。


 そっと角から顔を出すと、目の前にいた女性とばっちり目が合った。


「ひゃあ!?」


 私が悲鳴をあげるのと同時に、女性の手から出た光る鎖が、私の体を絡めとった。


「人助けのつもりだったか? 相手が悪かったな。ギルド内ランク1位は、警備兵に捕まらない。そんなことも知らなかったとはな」


 リーダーらしき男が、イヤミったらしい笑みを浮かべた。

 イケメンではあるのだが、私のキライなタイプだ。


 だいたい、捕まらないとかなにそれ!

 どんな特権階級よ!


「その人を放して!」


 私は思わず叫んでいた。

 そこの勇者さんの好感度を上げないと、こったは命があぶないんだからね!

 ちょっとやそっとのイヤミや脅しなんて通用しないんだから!


 と言っても、どうしようコレ?

 勇者さんは3人に囲まれてるし、私は動けない。

 正体をばらしたらなんとかなるだろうけど、評判がもっと下がるだろうしなあ。

 だ、だれかたすけてー!


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