第15話 合同アタック ③

 シュータ視点。


「やっべー、絶対に怒られるよーーー!」


 人に怒られるのが苦手な俺。

 あんな小さな子であっても、萎縮をして間違いなく土下座をしてしまう。


 出来るなら笑顔で許してもらいたい。


「それは無理ですよ。サーヤさんはギルドで一番厳しい人ですから」


 お壁ちゃんからの情報には、素直に礼を言えないな。

 走りながらでは、ほっぺをつねれないのが残念だよ。


「うわっ、もう始まってるであります」


 終わったよ、これで説教は確実だ。

 エミリさんの顔を潰すことになるし、遅刻は社会人のハジですよ。


 嘆きながら近づくと、何か様子がおかしい。

 悲鳴を上げているのは、ハンターサイドだった。


「動けない者が半数であります。指示を願います」


「お壁ちゃんは右にいけ、俺はあの銅色のイキッたやつをやっつけるよ」


「はいーーーー!」


 これだよ、これー。


 これでみんなを助ければ、遅刻は帳消しになるよ。

 颯爽さっそうと現れたら、それだけでヒーローだもんな。


「おいおい、何気なにげにピンチじゃないか。バン、バン、バン!」


 狙ったカブトの角を吹きとばし、胴体も粉々に粉砕してやった。

 オリンビートルは死に消え去る。


「えっ、誰なの?」


 力なく座りこんでいるちびっ子。

 あちこち傷つき、血が渇いているのが目立つ。

 自分をそっちのけで、他人の回復を優先した証拠だよ。


「お壁ちゃん、向こうを助けてやりな」


「りょーかいであります。ドカント・ウォール!」


 少し呆けていたちびっ子だけど、さすがBランクだ。お壁ちゃんが危険だと言ってくる。


「落ちこぼれのあの子ひとりでは、危ないわ。バン・マン、私はいいから行って!」


「んんん、お壁ちゃんも成長したんだぞ。その成果を見てやりなよ」


「ドカント・ウォール。そっちも行かせませんであります。ドカント・ウォール!」


「えっ、3連発。でもその分他のステータスが……」


 まだ出血で足元がおぼつかないのに、ちびっ子ったら人の心配をしている。

 俺はそっと手をだし、この子を支えた。


「ははは、安心しろ。それもクリアだ。お壁ちゃんは立派な盾役さ」


 だが、いかんせレベル4。

 みんなを活気づかせるために大声をだしたが、長くはもたない。

 なので、俺が終わらせるよ。


「ちょこまかとうるさいのを先に殺るか。そこだーーーー、バン、バン!」


 銀色のカブト虫を撃ち落とす。

 これに攻められていたメンバーは、助かったとすがってきた。


 俺としては、まだピンチの仲間を助けてよと思うが、それは無理かと頭をかく。


「ヒィッ、金色がきた。た、た、助けて。バン・マン」


 一度心が折れたメンバーだ、しょうがない。

 逆に動けているちびっ子の方を誉めるべきかな。


 金色のカブトが向かってくる間に、ちびっ子が回復魔法をかけて回っている。

 うし、任せて大丈夫だな、あとの憂いはなくなった。


「バン・マン、そいつの防御力は飛び抜けているの。下手をしたらBクラス並みだから、間接を狙って撃って!」


 しおらしいちびっ子の声援をうけ、任せろと拳をあげる。

 歓喜するメンバーに、金色カブト虫は歯ぎしりをしてくる。


 この金色もお山の大将だ。微塵も自分の敗北を考えていない。


「その硬さ、試させてもらうかな。バン!」


 渾身の一発。

 角を避け、目の上を狙って撃つ。


 だが、首を揺らしたことで、ツルンと流線形の外骨格に弾かれた。


「生意気だな。……でもそれがいい。倒しがいがあるってものだぜ」


 こうなったら小細工はなしだ。

 正面で角の根元を狙ってやるよ。


 ここで左右へのズレればまた弾かれる。

 角度を考え、ピンポイントでど真ん中を狙うしかないな。


 深呼吸をし集中をさせていると、金色が突進してきた。

 こいつは勝負どころを、分かっているみたいだな。


「だがよ、あんまり長引かせると、泣く子がいるんでね。一発で決めさせてもらうぜ。バキュン!」


 ど真ん中にヒット、尻の方まで到達し中を完全に破壊した。

 失速しドチャリと地面に。


 死体が消えるのを確認し振り返る。


「少しは役に立っただろ?」


「う、うん」


 あら、ちびっ子がやけに素直だよ。

 だいぶ点数を稼げたみたい。

 遅刻も咎められないし、これでやっと一息つけるぜ。


【♫格上を3体同時撃破により、スキル進化が進みます】


「いいいいっ!」


 思わぬご褒美に、変な悲鳴を上げてしまったよ。

 神様に礼を言いつつ確認をした。


 ────────────────────


『バン・マン Ver3』


 込める魔力口径が大きくなり、威力が増大します。

 弾数 10発

 リロード 弾数×MP2を消費

 Ver1~Ver3の切り替えは常時可能。


 攻撃威力: +200、+魔力×5.5

 ────────────────────


 攻撃力の大幅アップにうち震える。

 有難すぎる恩恵だ。切り替えると威力が250から640へと倍以上だ。


 試し撃ちをすると、Ver2より反動が大きく、岩に空ける穴も段違いだぜ。

 間違いなく俺は確実に強くなっている。


 それとドロップされた魔石の大きさもハンパない。


 何もかもが良いことくめ、ちびっ子も納得してくれて、ギルドに入れそうだし万々歳さ。


 魔石を持つ俺とちびっ子の目があう。

 すると、ゆっくりと頷いてくれた。


「それはバン・マンの物よ。みんな納得の権利だよ」


「ありがとう、俺こんな大きな魔石って初めてだよ」


「C級ボス3匹だからね。その価値は数十万円はするわよ」


「えっ、今のってC級なの? んんんん、ここってE級ダンジョンだよな?」


「それがダンジョンの突然変異がおきてね、バグアップで2ランク上のになったのよ」


 話の半分も耳に入ってこない。

 これはヤバい。これはもしかして、やっちまったかも……。


【♫レベルが上がりました】

【♫レベルが上がりました】

【♫レベルが上がりました】


【♫……レベル上限に達しましたので、以後経験値はストックされます】


「やっぱりだーーー、稼いだ物が全て消えちゃうよおおおおおおおおお! 」


 こんなの当たってほしくなかったよ、グスン。



 ──────────────────

【次話から第2部がスタートです】


 ここまでいかがでしたか?


 「面白かった!」とか、


 「続きが気になる、読みたい!」と思ったら


 おすすめレビューから、作品への応援お願いいたします。


 面白かったら星3つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です。


 作品や作者フォローもいただけると本当にうれしいです。


 何卒よろしくお願いいたします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る