Chapter7 接戦

 「さぁ、淡路に到着……えっ、ちょっと待って! ヤバいヤバい!」

 電車を降りた瞬間、充が斜め左方向のおよそ5メートル先に見つけたのは──見慣れた孝之のシルエットだった。

「えっ、ヤバいヤバい……」

 途端に脈が早くなり、緊張に身体を包まれてしまった。



 接近メロディーが聞こえてきた。

 孝之は早足で階段を登り、ホームへと辿り着くと、準急の天下茶屋行きが速度を落として決められた停車位置で停まった。

「あいつは確実にこの電車に乗ってる。えっと……6号車か」

 扉が開き、ダムの放水の如く、多くの人が降りて来た。

 孝之はすれ違う人とぶつからないようにしながら、6号車へと近付いて行く。



 孝之がこっちにやって来ている。

 引き返したいが、後ろにはまだ多くの人がいるため、狭いホームで立ち止まることはできない。

 咄嗟に充は顔を下に向けた。

(これでなんとか気付かれませんように……!)

 そして、ついに、孝之との距離は0メートルに。

 無事に気付かれず、すれ違うことが──





















 ───できた。


「よっしゃ、よっしゃ! なんとか、バレずにすれ違うことができた! あぶねー」

 孝之の背中が徐々に離れて行くのを確認すると、充は小さくガッツポーズをした。

 そして、さらに……



 孝之が6号車に入った。

「通知やと、この号車に……あれ、おらんな」

 車内に充がいないことを確認した。この駅で降りた——すぐ近くにいる。

 電車を降りて引き返そうとしたその時、

「えっ、ちょっと待って」

 お馴染み阪急のドアチャイムが鳴り、孝之の目の前で閉まってしまった。

 


「よっしゃww まさかのあいつが乗った瞬間、ドア閉まった」

 充は笑いながら、準急、天下茶屋行きが淡路駅を出発して行くのを見送る。「天下茶屋行きでしかも準急やから、天六まで停まらないから、これはだいぶ逃げられるな」

 車内にたくさんいた大阪梅田を目指す人が、一斉にこの駅で降りて混雑したこと、さらに実は充はゲーム開始時被っていなかった帽子を途中から被っていたため、孝之は見つけられなかったのではないかと思われる。

 いずれにしても予想外の重なったアクシデントのおかげで、かなりの時間稼ぎをすることが出来た。

 電車の最後尾に手を振って、(完全な煽り行動で草 by 作者)充は階段を下り、改札へ向かった。

(やけど、ここからや……)

 1dayパスを改札に通して、駅の外に出た。



 一方、その頃……。

「あーあ、これどこまで行くねん」

 準急天下茶屋行きは、千里線の淀川橋梁よどがわきょうりょうを渡っていた。

 

 ☆次回 Chapter8 大阪モノレールを封鎖せよ⁉︎

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