一人暮らしの子ども

連喜

第1話 母が去る

 これは私が子どもの頃の話だ。その頃は何とも思ってなかったけど、後から考えると、あの頃の生活はヤバかった。


 私が小学校5年生の頃、母が私を置いて出て行ってしまった。理由は男と暮らすのに私が邪魔だったかららしい。


 あの日、私が学校から帰ると、母が荷物をまとめて待っていた。

「お母さんは別の所で暮らすから、あんたはここにいるんだよ。お母さんがいないって言っちゃダメだからね。お金は毎月持ってくるから、あとは畑から野菜を取ったりして暮らすんだよ」

 その時、私は「行かないで」と泣いてすがった。母が好きだったから、離れて暮らすことに耐えられなかったからだ。

 私が追いすがって足にしがみつくと、何度も蹴られてしまった。それ以上しつこくすると、もっと痛い思いをするからと諦めた。母は私を可哀そうだと思うこともなく「すぐ戻って来るから」と言って出て行ってしまった。


 それからは、母に言われた通り、母との二人暮らしのふりをして暮らすようになった。


 以前から家事を手伝っていたから、別に不都合はなかった気がする。掃除はあまりしないが、洗濯、料理はある程度できた。食事は給食がある。できるだけお代わりして腹を満たす。それから、近所のパン屋さんで、パンの耳をもらうことができた。うちが訳ありだと思ったのか、いつもたくさん渡してくれた。それに、売れ残ったパンをくれたこともある。特にメロンパンがおいしかった。子どもだからちゃんとお礼も言えなかったけど、その人には今も感謝している。


 食事はいつも同じようなものだ。朝は、パンにマーガリンを塗って食べる。夜は畑で取れた野菜を茹でて醤油を掛けたり、パンを食べる。お金はほとんど使わなかった。手元にあるお金は、給食費や教材費として学校に払わなくてはいけないからだ。母も学校から電話が掛かって来ると困るから、それだけは持って来てくれた。


 でも、困ったことがあった。子どもだから、洗濯がうまくできなかった。だから、シミが付いて汚れた服を着て学校に行かなくてはいけなかった。だんだん、いじめられるようになる。しかし、休めなかった。学校に行かないと家に電話が掛かって来るから、どうしても行かないといけない。いじめられるとわかっているのに、学校に通わなくてはいけなかった。地獄だった。


 


 

 

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