彼女に俺の声は届いただろうか...

あけち

第1話 始まりの足音 ー1日目午前ー


俺、明智 一(あけち はじめ)は、トイレにいた


今日は、人生がかかっている




こんなところで終わってたまるか

俺は、あいつと同じ大学に行くんだ


そのために、どんだけ勉強したことか 友達の誘いを全部断り、睡眠時間をしっかりとって、1日14時間も勉強した


だが、最後の模試は、B判定

 

決して、悪くは無い



だが、不確実だ


その緊張のためか、お腹が痛い


明智「早く来て正解だったな...」会場時間が8:10〜で今は、8:20


試験は、9:30〜だった


明智「いててって....うぅー、さいあくだ…ぁ」そんなうめき声をあげていると、


足音が聞こえる、こちらに向かっている


明智「マジかよ...」


そして、その人物は、俺の横の個室に入る 


「あぁ、仲間がいたぜ だよな お腹痛くなるよな?」


??「これでよしと..もう浪人はできねぇんだ...許してくれ」と何かゴソゴソしている


男は、走っていった


明智「これって、カンニングしようとしてるってことだよな… 」


てか、なぜ俺気づかれなかったんだと思って考えると、俺は、「和式」と書かれたトイレに入っていたからだろうか


いや、洋式より、和式だろ!!お前何人だ?日本人だろ?と一人つっこんでいたが、虚しくなったのでやめた


明智「...そんなことよりどうしよう..」

このセントラル試験でカンニングするのは犯罪だろ もちろん、学校でもダメだが...


と脳内論争をしていると、俺の手元のスマホが鳴る


伊藤 愛花(いとう まなか)からLONEだ。


愛花「今、どこにいる?着いたんだけどさ..」

明智「どこにいるって?トイレだけど」

愛花「トイレで携帯触らないでよ 汚いよ」

明智「大丈夫だ、何もしていないから」

愛花「えっ?」

明智「お腹が痛いだけだ あぁ痛い いたたた た」

愛花「実況しなくていいから」


明智「あっ?そうなの?てか、横のトイレで後が無い浪人生がカンニングしようとしてるんだけど」


愛花「今日は、余計なことに関わらない方がいいよ.. それより、試験前に携帯を見て頭を疲れさせたく無いんだけど...」


明智「あぁ、そうだなわりい... 「伊藤」の席に今から向かうわ」


愛花「分かった ちゃんと手を洗いなよ」


と、いつも通りお母さん目線で話す愛花とのLONEを終えた


少しお腹が痛くなくなった あいつと話して、緊張がほぐれたからだろうか


と言って、立ちあがろうとすると


??「 緊張してきた...大丈夫だ...これで次こそは...」



俺は、お腹が痛くなくなったこともあり、話しかけることにした






やっぱりダメなものはダメだ






ー伊藤 愛花(まなかside)ー



愛花「遅いな...そんなにお腹痛かったのかな…」



だめだ、人の心配よりも自分のことに集中しなきゃ!


と、英語のよく間違えるまとめノートを出そうとしたが..


愛花「.......やっぱダメだ、明智くんのこと気になって集中できない」男子トイレの前に行く


試験会場は、田舎寄りでまだ早朝なため、人が少なかった

ざっと見ても4、5人


恥ずかしかったが、明智くんのことが気になったので声をかけた


愛花「ねぇ〜、まだ?」


呼びかけても、返事がない


すれ違いになったのかな


トイレの中から、音が聞こえる


もしかして、知らない人が入ってたかな...そう思い、男子トイレを見ずに背を向けた


中にいた人は、トイレから出て、会場に向かっていった


愛花「うわぁー、知らない人だったんだ…はずかしぃ」会場へと戻ろうとした


明智「まなか...」


明智くんの声が聞こえた 今、愛花って呼ばなかった?

今はどうだっていいよ、私 


愛花「明智くん!!何してるの?そんなにお腹痛いの?」

と問いかけた

こちらに来ない

なにか、嫌な予感がした

だから、私は、男子トイレを見て中へと入った


中に入ると頭を押さえて、トイレの中で座っていた

愛花「どうしたの!?」

明智「わりぃ、肩を貸してくれねぇか?」

愛花「うん!」

そう言って、明智くんは私の方を掴んで、トイレから出た


「ブラジャーの紐とか触られちゃったかな?それよりも肩の下も触られちゃったね..明智くんに?」

と考えていると顔が赤くなったのが自分でも分かった


今はそんなことを考えるな私


私は、会場の一番後ろの席に頭を押さえている明智くんを腰掛けた


愛花「何があったの?」

明智「なぁ、LONEで横のトイレでカンニングしようとしてる奴いるって言っただろ?」

愛花「うん、言ってたね」

明智「そいつに話しかけようと、扉を開けたところで急に頭を殴られて 後ろ姿しか見えなかった」

愛花「えっ?暴行加えられたの?」

明智「まぁ、そうなるか」犯罪でしょ...

愛花「今、体調大丈夫?頭クラクラする?テスト受けれる?」

明智「頭はまだ痛いけど お腹の痛みは、伊藤と話せて治ったかもな 頭の痛みも伊藤といると治っちまうかもな...」

愛花「それってさ...何でもない、何でもない…」


危うく、好きバレをするところだった 危ない 


明智くんと話すと、私の母性本能?みたいなのがくすぐられる


明智「じゃあ、勉強しますか?」そう言って、立ちあがろうとする

愛花「大丈夫なの?」

明智「大丈夫 てか、この試験受けないと一緒な大学行けないだろ」


この人は、本当にずるい

普通の人だったら、言いづらいことも平気で言ってくる

いつも私だけが、こんな胸の締め付けにあう


愛花「そうだね じゃあ、席にいこっか」私は、自分の席へと向かう


この人と、一緒な大学に行き、告白をする


告白が成功するかわからない


でも、この人の横にいたい


一緒に笑っていたい


それだけでいい



明智「あれっ?」

愛花「どうしたの?」


明智「受験票がない..」


愛花「えっ? ポケットだったり、鞄は?」


明智「いや、今探してるんだけど...」明智くんは、必死になって探す


明智「やっぱり、ないな...」


愛花「今日は、持ってきたの?」


明智「もちろんだ お腹痛い時に受験票を握りしめてたからな...」


どうしよう..そうだ! 先生がもし無くした時はって言ってた


愛花「事務所に行って早く受験票の再発行して来て!」


明智「分かった...やっぱまだ頭痛いな...」


受験票の行方は、どこなんだろう トイレの中までは受験票はあった


であれば、考えられるのは一つ


明智くんを殴ったカンニング男。


いま、会場にいる中で男子は2人


誰が明智くんの受験票を...絶対に許さない!!


でも、答えは既に出ていた


今、LONEで読み返していたら、浪人生だったと書いてある


その二人の一方は、学ラン、もう一方は、私服


私は、二人に近づき、よく観察してみた


学ランの方は、THE学校で配られた参考書、私服の方は、市販で売られている参考書が多かった


また、私服の方は、貧乏ゆすりがひどく、ブツブツと独り言を言っている


犯人は、この男だ


正直、問い詰めようとは思わない 時間の無駄だからだ こんな最低な男に時間をかけたくない だが、どういう男が犯人かは見ておきたかった 


私は、立ち去ろうとした


その時、


その男の目から涙が流れていた


参考書には、涙の跡が残る

その参考書をよく見ると、すごく使い込まれたであろう傷んである


私の心は、悲しくなった


別に、同情しようとは思わない 最低の行為だから


だとしても...


私は喋りかけることにした


愛花「あなたの努力は報われるはずです だから、落ち着いて ゆっくりと呼吸を整えて」そう言うと、男は、涙をぬぐい、ゆっくりと呼吸を落ち着かせた


??「ありがとうございます もう後がなくて...」


愛花「今日の試験、真剣勝負で戦いましょう」


これでカンニングなんて卑劣なことに行動を移さないだろう


??「はい..そうですね..真剣勝負......」

愛花「では」

??「...」


私は、その言葉を聞き、席へ戻り、最後の復習をする


真剣勝負と言ったからかもしれないが、明智くんの様子お構いなしに勉強をした



明智「伊藤、勉強してるとこ悪い 受験票の再発行ができて受けれるわ」

愛花「よかった!!本当に!」

明智「悪いな、心配をかけて」

愛花「そんなことないよ!」

明智「じゃあ、がんばろうな!!」

愛花「うん!」本当に心の底から安堵した

あとは、自分に集中しよう



集中していたら試験が始まった

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