第8話 ペロル、宿屋を探す

北区を走り回るペロルは良さそうな宿屋を身繕いながら手紙の配達を済ませていく。商業区と言うだけあって依頼や素材卸しの手紙が多いらしくせっかちな人がサインをせずに中身を確認して愚痴をこぼしたりしていた。


配達の半数を終えたところで良さそうな宿屋を見つけたので中に入ってみる。受付は子供がしているようでペロルが来たと分かるとカウンターの中から顔を出してきた。


「お客さんですか?」


「まだ決まってないけどな。一泊いくらかな?」


「朝夕の食事付きで銀貨一枚です」


ペロルは懐から銀貨一枚を取り出して店番をしている子供に手渡した。


「とりあえず一泊頼む」


「この名簿に名前を書いてください」


名簿に名前を書き入れ、ペロルは夕方ごろにまた来ると言って宿屋を出た。野宿を免れたペロルは張り切って手紙を配達していく。


配達が終わったのは午後三時頃、冒険者ギルドに向かい担当してくれている受付嬢のミーシャさんのところへ向かう。次は口頭ではなく依頼票を見せて依頼達成の報告を済ませる。


「もう終わったのですか?ペロルさん早いですね」


「足だけは自身がありますからね」


「ちなみにペロルさんはこの手紙配達が終わった後はどのような依頼を受けるつもりなのでしょうか?」


「と言いますと?」


「実は他の村に当てた手紙の配達も滞っておりましてペロル様がよろしければお受けしていただけないかと思いまして」


「それは構いませんが、街中の依頼を先に受けさせてください。地図を作る仕事も請け負っていますので」


「分かりました。では、この後はどうなさいますか?今日の配達はおやめになりますか?」


「今日はもうやめておくよ。明日の朝に依頼を受けに来るから準備だけはよろしく頼むよ」


「それでは北区の手紙の配達料で銀貨二枚です」


ペロルは銀貨を受け取り、冒険者ギルドを出た。そしてまっすぐ宿屋に向かう。


宿屋に着くとそこには子供ではなくきれいなお姉さんが受付をしていた。


「あら。お客さん?いらっしゃい」


「この宿を予約したペロルです」


そう言うとお姉さんは名簿を見て名前を探す。だが見つからないらしくもう一度名前を尋ねられた。それでも見つからない。ペロルは何とか説得し、名簿を見せてもらうと自分の書いた字を見つけた。そこにはエロスと書かれていてお姉さんはペロルをかわいそうな目で見つめていた。

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