第6話 ペロル、街を走り回る

受付嬢が持ってきた手紙の束はご丁寧に東西南北と中央の区域ごとに仕分けされていた。


「ペロル様、手紙をお持ちしました。今日はどの区域を回っていただけるのでしょうか?」


「えっ?全部じゃなくていいの?」


「流石に一日ですべて回るのは不可能かと・・・」


ペロルはとりあえず中央区の手紙を受け取り、終わり次第冒険者ギルドに寄って次の手紙を受け取るようにした。仕事が終わらなかった際も冒険者ギルドに寄り届けていない手紙を必ず返すように注意された。


ペロルは中央区を走るが人が多いためうまく走ることができない。辺りを見渡すがどこにも走りやすそうな位置を見つけることはできなかった。ただ一点、屋根の上だけは走りやすそうだと感じたが・・・。


そこでペロルは空歩のスキルをとった。これで人の波に乗らずに手紙を配送できると思ったのだが、五歩走っただけで空中の足場は消えてしまった。そして、足場を無くしたペロルは登ろうとしていた建物の壁に激突した。


何故だと疑問に持ったペロルはステータスを確認する。するとMPの値が0になっていた。どうやら空歩は一歩につき一のMPを消費するようだ。


と言うことを考えていたペロルは自分が注目を受けていることに今気づいた。そして衛兵が自分に近づいていることにも。ここで逃げてしまっては犯罪者にされかねないので大人しく待っていると。


「お前、そこで何をしている?」


と声をかけられた。ペロルは自分が行おうとしていることを話し、それに失敗したことも話すと衛兵は笑いをこらえながらこう言った。


「それは気の毒だが。屋根の上を走ってはいけないぞ。もしやったら取り締まるからな」


そう言い残し衛兵は去っていった。ペロルは考えを改め、周りを見渡したがそんなうまくいい案は浮かんでこなかった。


ペロルはおとなしく駆け足状態で人の波にまぎれ、手紙を配達することにした。


中央区の手紙はどれもお店に当てた物ばかりだった。どうにかお昼までに配達を終えたペロルは冒険者ギルドへと戻ってきた。すると午前中に担当してくれた受付嬢が駆け寄ってきた。


「ペロル様。どうかなさいましたか?」


「中央区の手紙の配達を終えたので戻ってきました」


受付嬢はポカンとした顔で口が半開き状態になって固まってしまった。ペロルは目の前で手を振り受付嬢を現実に引き戻す。


戻ってきた受付嬢は手紙を受け取った証のサインが入った依頼票を見て本当に手紙を配達し終わったことを悟った。

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