第4話 女神のメスガキをわからせた!

 苦難の末にどうにかこうにか《萌える石》と《ヲタク雲の杖》を手に入れたのだが、これだけで使ってみても何も起こらない。

 とすると、これらと引き換えに何か別のアイテムを手に入れろということなのだろうか。


 軽く行き詰ったところに、俺はふと伝説の勇者コドージの石板に記されていた一文を思い出した。


 ――氷河の女神によってこの世界へ転生させられた者なり――


 どうやらこの氷河の女神っていうのがキーパーソンのようだな。そういやイザベルも、クソ女神がどうのとか言ってたっけ。


 俺は早速ヨーツンヴァイム城へ戻り、相変わらず舐めた態度のイザベルに《わからせ棒》を使いつつ、女神についての情報をあれこれ聞き出した。


 氷河の女神は、ヨーツンヴァイムの遥か北にある永久凍土の洞窟に棲むという。

 

 そこで俺は、草木も生えていないつるぺたで不毛な大地を数日間彷徨い、ようやくそれっぽい洞窟を見つけた。


 洞窟の入り口はとても狭く、その中も人ひとりがやっと通れるほどの幅しかない。しばらく進むとやや開けた場所に出て、そこにはファンシーな家具や小物類が所狭しと置かれていてた。


 そして中央にはひと際目を引く豪華な天蓋付きのベッドがあり、幼い女の子が静かに寝息を立てている。


 ――あっ!

 

 長くさらっとした銀髪が目を引くその女の子の顔をよく見ると、俺の部屋にやって来たあの子じゃないか!?


「おい、コラ! 起きろ!」


 俺はよだれを垂らして満足そうに眠る女の子の布団をはぎ取り叩き起こした。


「う、うーん……、我の眠りを妨げるのは誰じゃあ……。あっ、お主はあのクソざこ!」


 目覚めたと思ったら、お前もいきなり俺をクソざこ呼ばわりかよっ!


「よくここまでたどり着いたの~。やはり我が見込んだ氷河期おじさんだけのことはあるではないか。褒めて遣わそう♡」


「お前が氷河の女神か? そしてお前があの日俺の部屋にやって来て、この世界へと転生させたのか?」


 俺は《わからせ棒》を使ってわからせてやりたい気持ちをぐっと堪えて、努めて冷静に女の子に尋ねた。


「いかにも我は氷河の女神スカーラ♡ そしてお主をこの世界に転生させたのも我じゃ♡」


 スカーラはだぼっとしたバスローブのような服を着ているのだが、その胸元が大きくはだけていて、透き通るように白いつるっとした肌が覗く。


 くっ……、まだだ! まだ《わからせ棒》を使うのは堪えろ、俺!


「なぜだ? なぜ俺をこの世界へ転生させたんだ?」


「なぜって、それはお主が元いた世界の日本において、何の役にも立たない氷河期世代のおじさんだからじゃ。日本政府はもはや社会にとってお荷物でしかないお主らのような存在ゴミに見切りをつけ、強制的にこちらの世界へ送る密約を我と交わしたというわけじゃ」


 何だよそれ。あのいかれた法律は本当だったってわけか……。

 

 衝撃的な真実を突き付けられた俺はがくっとうなだれた。


「何じゃ、そんなにショックだったのか? まぁどうせあのまま日本にいてもろくな人生ではないのじゃからよいではないか♡ お主はクソざこじゃが、これまでの氷河期のおじさんよりは見込みがありそうじゃぞ♡ その調子でさくっと魔王を倒してこい♡」


 スカーラはその妖しげに光る赤い眼に最大級の侮蔑の色を湛えて俺を煽ってくる。


 ……ふう。俺の中で何かが弾けた。


 そして俺は《わからせ棒》を使った。


「えっ? な、ななな、何じゃ? 女神である我にそれを使うというのか?? こ、これ、何をする! は、離せ、無礼者っ! あっ……」


 俺は《わからせ棒》を使った。


「ふぁっ!? だ、だめじゃ、それはだめじゃ! ひっ、ひいい! き、貴様っ、我にこのようなことをして……、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……」


 俺は《わからせ棒》を使った。


「あんっ♡ んあっ♡ はっ♡ ふひゅ♡ や、やめっ、やめ……てはだめなのじゃ~! んんっ♡ はっ♡ もっと、もっとなのじゃ~♡」


 俺は《わからせ棒》を使った。


「い゛い゛い゛い゛い゛……あっ♡ ひっ♡ こ、壊れる、壊れちゃう~♡ ん゛ん゛ん゛んあっ♡ も、もっと、もっと壊して欲しいのじゃあああああ♡」


 激しくわからせられたスカーラは、昏倒する前に《氷河のしずく》を俺に手渡した。

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