対 藤枝中央女学園 part1

主人公のプロフィールを近況ノートに投稿しました。

イメージイラストをアップしたので、ぜひ見てください


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春季県大会中部地区予選大会の4回戦。

全国経験がある強豪校、藤枝中央女学園と星彩女子高等学校の対戦は、草薙球場で行われる。



球場の前で部員と集まっていると、6台の大型バスが駐車場に来た。


「すっごーい!大型バス!」

「さすが全国有数のお嬢様学校ね」

「こんなバスを用意できるほどの学校だし、スポーツスカウトとかありそうね」

「スカウトしなくても、学校が文武ともに施設がいいから集まるけどね」

「そう言えば……、レイちゃんってこの学校の人にスカウトされてなかったかな?」

「来てたような……?県外からも来てたからね、覚えてないよ。 セイちゃんは伊豆東からだよね?」

「うん、投手層が薄いからって来てたよ」

「それ、ウチのとこにも来てたかも。あっ、でも、ウチの場合は当時の先生にパンフレットを渡されただけだし、綺羅とは違うかも」

「中学生で速球ストレート120キロも出てたら欲しがるよね……」


綺羅、水瀬、七草と篠田で選手スカウトについて談笑していると、大型バスから監督と選手らしき人達がぞろぞろと出てきた。

監督を先頭に選手たちは3列で綺麗に並び、移動をしている。

その様子から、気品の良さと共に威圧感を感じる。


「なんか訓練された精鋭の軍隊みたいだね……」

「ほら、先頭近くを見てごらん。 背番号が20まで見れるよ」

「レギュラーメンバーもそうだけど、部員数多いね……」

「わぁ……、後ろには楽器を持った人達がいる!いいなぁ応援に吹奏楽部いて」

「一応、地区予選の準決勝だから、こっちにも吹奏楽部に応援してほしいよね……」

「うん……」

「おーい、そろそろ準備し始めるぞ」



そろそろ試合時間が近づいたので浅野に声を掛けられ、ウォーミングアップをするため球場内に入った。








お互いのチームのウォーミングアップが終わり、レギュラーメンバーはグランドに整列し挨拶を行い試合開始となった。

ウォーミングアップを見るに、さすが全国経験を持つ高校でこちらとの練習練度が違っていた。

無駄のない捕球からの送球の動きに、選手同士の声掛け。


「不安にになったの、ナナちゃん?」

「な、なってないし!ウチのチームも負けてないから!」

「そうだね」

「ただウチが先発。 浅野先輩に任されたからにはやらないといけないと分かってはいるけど、いきなり全国クラスなんて……」

「さっきの練習を見て萎縮したの?」

「……っ」


七草の手が少し震えたので、私は緊張を解すために両手で手を包み込む。


「大丈夫だよ、ここで終わりじゃないし、いきなり全国クラスとの対戦が出来るいい経験だろ思うよ。 しかも、私たちは入学してすぐの大会で経験出来るんだよっ!」

「急に緊張して、心臓がバクバクする……」

「今日はナナちゃんがエースだよ。エースがそんなんじゃ、チームが不安になるよ。もしかしたら、先発が私に変更になるかもねっ!」

「っ!? 私がエース……」

「そうだよ。 それに浅野先輩からの指名でしょ? それだけ実力があって期待されているんじゃない? 他人ごとかも知れないけど、いつものようにブルペンで投げている球を出せばいいよ!」

「……そうだよね。 弱気なんてウチらしくないっ!当たって砕けろだしっ!」

「うんうん。その調子! 後ろには私が控えてるからね。 私はいつでも変われるよ!」

「ウチが完投するから綺羅の出番なんか回ってこないし!」

「それは浅野先輩のオーダーから外れるから、交代はするからね」

「うぐっ……」


一回の裏、藤枝側の攻撃が始まり七草はマウンドに上がる。

その後、3球の投球練習を始める。



「何、あの投手?二年?」

「いや、二年生の投手は背が低い感じの子だった気がする」

「まさか、一年生を起用なの?」


藤枝側の陣営のベンチが騒めき出した。


「まさか、エースである浅野を2連投させると思ったが一年生を起用するとはな」

「ええ、そうですね。こちらに全く情報がない選手が来ましたわね」

「中々速い球じゃない。千歳と同じくらいか?」

「おそらく、ですけど」

「でもぉ~、まだ入学したての投手だからぁ~、身構えなくてもいいよぉ~。 それになるべく粘って、甘い球が来たら打てってぇ~監督に言われたので、様子見ですねぇ~」

「唯なら全部甘い球に認定して、全部打ったりしてな」

「さすがに、それは……]


皆は唯のおっとりした様子を見て、ありえそうだと思われていた。

その会話を終わらせると、現在一打順目が終わり、ちゃっかりと出塁していた。


次は二打順目は稲葉だ。


「次は私の番ですね! 指示通りに走者が揺さぶりつつ、バッティングで粘りますね」

「選手の情報がないからと言って、入学して間もない一年生投手にえげつない戦法を指示するな監督……」

「毎試合全力で相手にするからね。 確実に勝つ指示をしているんじゃない?」


普通の作戦と言っても、相手は一年生。

真剣に戦わないといけない皆は分かってるけど、少し引いてた。


場面が移り変わり、打席で稲葉がバットで粘り、ファールを取って七草の球数を増やそうとしていた。

一塁に牽制しても、しつこいリードを繰り返す走者。


『くっ……、わざとファールを狙ってきてウザイし』

『ここは一塁は無視で打者に集中ね。 それにしてもコースギリギリに球を受けようとしても、打ってくわね。 ここはスライダーでインコースの高めで球を打ち上げさせるよ』

了解、芝井先輩』


4球目、インコースの高めにスライダーを投げる。


「まだ攻めてくるのね! 無駄だよ」


多少、ゾーンに外れそうな位置になりそうだが、ファールでストライクのカウントを稼いだ稲葉は、球を見送ることはできない。

バットの芯で捉えられなかったものの、木製バットと違って金属バットの広い範囲で当たったものの、球を真上に打ち上げ捕手キャッチャーフライになった。

これにより1アウト1塁という場面になった。


『次はクリーンナップ、引き締めるわよ』

了解!』


「ナイス粘り!」

「ありがとうございます先輩。今のところストレートとスライダーを分けて投げてる感じです。 スライダーは、そこまでキレはなかったです」

「分かった、ほかに球種がないかこっちでもスライダー狙いで打つよ」


稲葉はベンチに戻ろうとしているところに、打者待機場所バッターサークルで先輩に声を掛けられた。

ベンチに入り、すぐに監督の元に向かい報告を行う。


「どうだった、稲葉」

「あっ、白滝先輩。 そうですね、中々のストレートで制球力コントロールも良い方だと感じました。 一年生で先発に選ばれるほど実力を持っていると納得しました」

「なるほどね、あちらは浅野以外にも戦力が集まりつつって感じだな。 今年はあの子が当たりって感じかな?」

「おそらくは」

「だが、私達には敵わない」


次は、上位打者でも特別の3人衆であるクリーンナップだ。

集中して球をコントロールしないと、簡単に点を取られる。

七草は全身全霊で勝負の挑んだ。

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