第忌譚・零

『照る照る坊主 照る坊主 

 明日 天気にしておくれ

 もしも曇って泣いてたら 空を眺めてみんな泣こう


 照る照る坊主 照る坊主 

 明日 天気にしておくれ

 いつかの夢の空の様に 晴れたら金の鈴あげよ


 照る照る坊主 照る坊主 

 明日 天気にしておくれ

 私の願いを聞いたなら 甘いお酒をたんと飲ましょ


 照る照る坊主 照る坊主 

 明日 天気にしておくれ

 それでも曇って泣いてたら そなたの首をチョンと切るぞ』


 雨の降る中で、傘も差さずには歌っていた。雨粒は、その体を通り過ぎ地面へと落ちて行く。

 歌い終わると、片手に持ったを大事そうに撫でながらがぽつりぽつりと話し出す。


『酷いよね。お坊さまは、みんなの為を思って行動したのにさ。


 最終的には首を切られて殺されて、あまつさえ切られた首を見せしめにされた挙句。自分を殺した殿様はお咎めなしで、更には首を吊るしたおかげで晴れたみたいに言われて……これじゃあ、お坊さまがあまりにも不憫ふびんだよ』


 俯いている所為での表情は見えないけど、声が暗く沈んでいる様に聞こえる。


『悪い事なんか、何もしていないのに……こんな最期、死んでも死にきれなくてボクなら成仏なんて出来ないもん』


 は、言い終えると手に持っていたを目の前の木へと吊るした。


『だからね。今回の鬼は、に決めたんだ』


 小さな声で呟くと、は僕の方を向いた。辺りはしんっと静まり返っている。


『すぐに捕まらないでね ? 

 ……そんなの、つまんないからさ。頑張って、逃げてよ ? 



 綠くん』


 降る雨が激しさを増し、が不気味に笑う。次の瞬間、雷鳴が轟きを吊るした木に稲妻が直撃した。

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