一方その頃3(玲緒奈視点)

 四月十二日



 私と陽は各々が神降ろしの儀式へ挑んでいた所、珍しく梓に呼ばれて、食堂棟へ向かう。


「梓が嬉しそうにあたし達を呼ぶなんて珍しいわね!!」

「…うん」


 私の隣で歩いている陽は呑気に雲一つない青空を見ながら、唇を尖らせながら、歩いている。少しムカッてくるけど、それは彼女の取り柄でもある。


「なによー!!」

「何も…」


 陽へぶっきらぼうに返事をした後、私達は食堂棟へと到着した。




 ◆◇◆◇




 食堂棟の大きな扉を両手で押すように開くと、分かりやすい位置に穂花とりっちゃん先生、そして梓が机を笑顔を咲かせながら囲んでいた。




 なんだろう…

 嫌な予感がする…

 胸がモヤモヤする…

 耳に入れたくない…




「お二方も聞いてください!!この度、梓は何と『最高神:セレス様』と契約する事ができま…ってあれ、玲緒奈ちゃん…?」

「………嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁ!!」




 私は、彼女の言葉を全て聞き終える前に両耳を押さえて、拒絶の言葉を連呼し——気づいた時には食堂棟から抜け出し、校門の外へと来ていた。




 どうして、梓の事も好きなのに…なんで、私は陽のように素直になれないんだ——と思わず、自己嫌悪に陥ってしまう。




 ふらふらと身体を左右へ揺らしながら、家へ帰る途中で、と出会う。





「確か、月夜玲緒奈だっけか…?」

「月夜さん、お久しぶりアル…」

「………なに」




 如月健斗——私に対して酷い言葉を発してきた男、そんな彼がなぜ、リュンさんと一緒に…?




 しかも、私が弱っているところ——あまりにもタイミング良すぎる…。まるで、…、私達はリュンに監視されていた…!?




「玲緒奈は穂花の力になりたいだけなのに可哀想アル…」

「……何が言いたいわけ」

「俺はリュンと創造主のおかげでと契約することができたんだ」

「………だから?」

「玲緒奈もこっちに来るアル。ともすれば、とも会えるかもしれないアル」




 彼女の予想外の言葉に私の脳内が真っ白に染まる。お母さん? ありえない。だって、私のお母さんは…三年前に…




「ねぇねぇ…三人でひそひそと話してないで、僕も混ぜて欲しいな?」




 後ろを振り返ると、拳を胸に掲げて戦闘態勢を取っている穂花がいた。




「健斗、ここは退くアル」

「穂花…どうしてここに…?」

「黄泉穂花ァァァァァァァ」

「エリスゥゥゥゥゥゥゥゥ」




 ドガァッ




 四つの声が重なったコンマ数秒後、ちょうど私達の対峙していた真ん中付近で二つの力が大きな音を立てて衝突した。




 如月健斗は獲物を見つけたと言わんばかりの笑みを——

 私の黄泉穂花いとしのひとはどこか悲しそうな表情を——



 少なくとも私の視界には、そんな風に映った。


 


 結局、驚きの声を上げながら押し倒されたのは…如月健斗だった。





「ハァ…だから言ったアル」

「っるせーな!!」

「とりあえず…退くアル」




 リュンの言葉通り、彼らは私達に背中を向けて…立ち去る。その足取りは『攻撃できるものならやってみろ』と挑発してるかのようだった。




「玲緒奈の方が優先だから…許すけど…、次は絶対に見逃さない…」




 私を守るように少し前にいる穂花は拳をぷるぷると震わせていた。





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