雲と花2
りんごを敢えて、ゆっくりと味わうことで時間を稼ぎながら、全力で思考を巡らせてみたものの——打開策が思い浮かばず、りっちゃん先生に支えられながら、レスタ魔法学院の校門を出て、自宅の方向へと向かう。
◆◇◆◇
「りっちゃん先生、今日はお父さんとお母さんの結婚記念日なんだ…!!だから、その、できれば挨拶は後日にしたほうがいいんじゃないかな…?」
——お父さん、お母さん、ごめんなさい!!でも、今のりっちゃん先生を止めるには…これしか…!!
「本当ですか!?それならば、もっと早く言ってください!!お金は私が払いますので…ご両親の祝い品を買いに行きますよ!!」
——くっ…僕が高校時代の青春をエロ漫画に没頭するのではなく、もっと恋愛経験を積めていれば…!!
『ヤレヤレ…見てられんのじゃ。妾にお供物を用意しておくのじゃ。「僕の家に来るのは構わないんだけど、朝チュン覚悟はできていますか?」と言ってみるのじゃ』
—— え゛、それ本当に大丈夫なの?
『うむ、妾を信じるのじゃ。妾の考えが正しければ、これでイチコロなのじゃ』
「りっちゃん先生…僕の家に挨拶に来るのは構わないけど…その場合、僕と朝チュンする覚悟はありますか?」
アフロディーテの俄かには信じがたい言葉を出来るだけ、そのまま彼女へ伝える。
すると、りっちゃん先生の表情がみるみるうちに赤くなっていく。
『うむ。やはりなのじゃ。この女子は、主をリードしたかっただけなのじゃ。積極的な女子ならば、童帝契約者の少しばかりカッコつけた言葉だけで
——カッコつけた言葉だけって失礼な!? あの時、かなり緊張したんだよ…!!後、童帝で悪かったな!!
「あ、あの…ほ、穂花、急用を思い出してしまったので…自宅の前まで…送らせていただく事にします!!」
——へ、ヘタレだ…。
『ヘタレじゃな』
「わ、私はヘタレじゃありません!!」
僕とアフロディーテのやりとりをまるで、その場で聞いていたかのように、両頬を膨らませながら、否定してきたのが面白くて、思わず、声に出して笑ってしまう。
同時に、そんな彼女の姿が愛おしくて、いつか告げようと思っていた告白を口にしてしまう。
「りっちゃん先生…改めて、僕はあなたの事が大好きです!!よーちゃんとも、玲緒奈とも付き合っているこんな僕と付き合って頂けませんか?」
「別れ際に私から穂花へ改めて、告白しようと思っていたのに…また失敗してしまいました…。失敗したのに…私はどうして涙を流して喜んでるんでしょうか…?」
「…その涙の
お互いがお互いを意識してしまい…終始無言になりながら、満開だった夜桜の花弁が舞い散る帰り道を手を繋いで僕の自宅へと足を運んだ。
りっちゃん先生は、僕の家の前まで着くと「で、では…また学院で…」と駆け足で元の道を辿る。
彼女の背中が見えなくなるまで見送った後、「ただいま」と扉を開けた瞬間——鬼のような形相をしている僕のお母さんが仁王立ちしていた。
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