10.誕生魔石

 各月にはそれぞれ、星座、属性、誕生魔石がある。


 今はおじいちゃんのところでサフィアちゃんと一緒にお勉強中だ。


 1月 兵士座   火 赤 ホーンラビット

 2月 冒険者座  水 青 スカイゼリーフィッシュ

 3月 商人座   地 黄 ウッドゴーレム

 4月 ヒール草座 風 緑 リクウミウシ

 5月 聖職者座  闇 黒 ゴブリン

 6月 ヒューム座 聖 銀 エンジェルローパー

 7月 メイド座  火 赤 コボルト

 8月 奴隷商座  水 青 ブルーウルフ

 9月 奴隷座   地 黄 オオダンゴムシ

 10月 傭兵座 風 緑 ビッグスラッグ

 11月 王座  無 紫 スライム

 12月 女王座 聖 銀 トレント


 色は魔石の色だ。

 誕生魔石はその該当モンスターがいる。

 どれも一般的だけどトレントはちょっと強い。


 それからことわざで「最強のモンスターは王とスライム」。

 あとは「王様は王女様に頭が上がらない」とかかな。

 11月より12月のほうが偉いように見えるから。

 ほかには「王様は改心なされた」とかもあるかな。これは闇属性であったのに改心が神に認められ無属性に昇級したのだとか。

 奴隷商は左右のメイドと奴隷を扱っているとか。

 奴隷のなりそこないが傭兵である、とか。

 異彩を放つヒール草座もたまに話題にはなる。いわく生活に必須なので特別に星座へ追加されたとか。


「むにゃぁ」


 サフィアちゃんはすでに眠そうだ。


 人間にも魔石がある。

 公然の秘密なのだけど、人間の魔石はゴブリンと同じ闇属性だ。

 そのため聖属性が少ないといわれている。

 このことを教会まわりで言いふらしたりすると処罰を受ける。

 いわゆる禁句だ。

 墓を荒らして人間の魔石を採取することも禁止されてる。


 誕生魔石は属性さえ一致していればいいからこのモンスターでなければいけないわけじゃないけど、できれば決められたモンスターのほうが縁起がいい。


 ふむふむ。


 実はもうすぐサフィアちゃんの8歳の誕生日なのだ。

 私が4月生まれ。ヒール草座なのが実は自慢だ。

 そして今が5月上旬。


 聖職者が闇属性っていうのが、なんか裏社会を反映してるみたいで怖いよね。

 でもマリアーヌ教会の人は悪い感じではなかった。

 場所によりぴんきりなんだと思う。


 それでサフィアちゃんのゴブリンの魔石が欲しい。


 今日のお話はこれでおしまい。


「さて以上じゃ。ごくろうさまでした」

「「ありがとうございました」」


 こうして今日の講義が終わる。

 実はこういうの王立学校で習うような内容であるらしい。

 別に内容は難しくないし、ただ暗記すればいいだけだ。

 関係するお話まで覚えるのはちょっと大変だけど、面白いから、すぐ覚えそう。


「さてサフィアちゃん」

「うん」

「ということで、プレゼントしたいからゴブリン狩りにいきたいんだけど」

「いいぞ」

「でもさすがにお母さんがゆるしてくれないよね」


 そこでおじいちゃんがこっちを向く。


「そこでわしじゃ。おいぼれこの先短いが、まだ使えるぞ」

「おおぉ」

「わしにまかせろ、ばりばりばり」


 そういって剣を振る仕草をする。


「おじいちゃん剣もできるの?」

「いんや、形だけだのう、魔法が専門じゃ」

「そうなんだ」


 こうして私とサフィアちゃんとボルドおじいちゃんのパーティーが結成された。


「パーティー名を決めよう」

「おう」

「ふむ」


 何がいいかな。


「ランドシーカウ」

「なにそれ」

「リクウミウシの別名」

「へぇ」

「わしはなんでもいいぞ」


「それじゃ決定、ランドシーカウね」


 第3都市エルドリードの西側には森が広がっている。

 その名も西の森だ。


「出発!」

「おぉう!」

「うむ」


 さて目標は森全体に分布している。

 浅いところにもよく出てくる。


 狙い目はそういう浅いところに出てくる偵察兵だ。


「それじゃあわしが探知魔法を使うぞ」

「うん」


「それでは――サーチ探知


 なんとなく目には見えないが魔法の網の目が周囲に広がっていくのを感じた。


「おぉおぉ」

「ふにゃ」


「右30度。距離300メートルくらいじゃな」

「もう?」

「うむ」


 そうして目標方向に進んでいく。

 森は下草が密集しているわけではなく、背の低い草が生えていて、木は間隔を開けて立っているので、十分に歩くことができた。


「あれじゃな」


 おじいちゃんが指をさして遠くを見つめる。

 ああ、いるいる、ゴブリンだ。

 初めて見るけど、聞き及んでる特徴と一致している。


 二足歩行の人型、子供くらいの背丈、ハゲ頭、緑色の皮膚。

 腰巻と棍棒。


 偵察でも弱いんだから3人くらいでくればいいのに、と他人事ながら思う。

 そうすれば最悪でも誰かをおとりに他の人が逃げれば、偵察として役に立つ。


 見物していると、なにやらたまに拾い食いしている。


「あれはドングリを拾って食べておるんじゃ」

「なるほど」


 ドングリは人間も食べる。

 この森は広葉樹も多いから、きっとドングリの木もあるのだろう。


 気配をなるべく薄くして頑張って近づいていく。


「ゴブゴブ」


「おっと、気づかれたようじゃな」


 なぜかゴブリンはどうみても劣勢なのに棍棒を振り上げてこっちに向かってくる。

 偵察兵じゃないのだろうか。


「サフィアの火魔法でいいかな?」

「ううん、ここはエミルちゃんで。誕生日プレゼント、くれるんでしょ?」

「そうだった。じゃあ私が」


 そういって私が右手を構える。

 火の玉だ。

 熱く圧縮した火の玉を想像する。


「熱い火の玉よ、いけ――ファイア」


 ブウォっと10センチくらいの火の玉がゴブリンめがけて飛んでいく。

 それをなぜか棒立ちで見つめるゴブリン。


 あたる直前、ようやくびっくりしたゴブリンだったけど、もう避けられず、そのまま胸に穴を開けた。


 ドスっとゴブリンが倒れた音がする。


 近づいてみると見事に穴が開いて周りが焦げている。

 魔石は無事だった。


「これがゴブリン」

「そうじゃ。一見弱いが集団は厄介じゃ。注意するように」

「はい、おじいちゃん」


 黒い魔石を取り出すと、残りはそのまま廃棄する。

 どうせすぐウルフなどの餌食になって、食べられてなくなってしまう。


「ゴブリンの闇属性の魔石、ゲットだぜ」


 こうして魔石を取得した。

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