5.サフィア

 さて私の生活を語るなら、外せない一つに、反対隣りのサフィアちゃんがいる。


 私は金髪碧眼のヒューマン。

 お隣のサフィアちゃんは同じく8歳になる黒髪緑目の狼耳獣人さんだ。


 正確には「ウェアウルフ」というみたいだけど、難しいのでみんな「狼人族」と呼ぶことが多い。


「サフィアちゃん!」

「おお、どうした、エミルちゃん」

「私、ついにね、属性判定して水、火、聖属性だったよ」

「ふむ、すごいな」


 サフィアちゃんが、ニッと笑う。

 そうすると口から八重歯というか牙がニョッと出てくるので、可愛い。


「さてあたしは何だろうな」

「サフィアちゃんは火だよ絶対、火」

「まあそうだろうが、他はどうだろうか」

「うーん、闇とかいいよね、闇」

「闇か。ちょっと暗黒術か、かっこいいな」

「だよねぇ」


 暗黒術! 暗黒術!

 すごい。できたらかっこいい。


「暗黒術か、今度試してみよう」

「うん」

「今日は火の玉遊びをしよう」

「そうだね!」


 私とサフィアちゃんが、的から数メートル離れて並ぶ。


「では、ファイア」

「ファイア、ファイア」


 私とサフィアちゃんの手から小さい火の玉が連続で飛んでき、的にぶち当たる。

 それを何回も繰り返す。


 木の的はだんだん中央が黒くなっていき、最後にはパカンッと真っ二つに割れてしまう。


「うん、今日も快調だね」

「木の的程度、あたしたちの敵ではないな」


 うむ。その通りだ。

 こうして今日の魔法の練習を終わらせる。


 残魔力量は半分以上残っている。

 毎日こういう遊びをしていたので、私たちの魔力量はかなり多くなってしまったらしい。


「ねえねえ、聖水できるようになったの」

「ふむ、見せてくれ」

「うん」


 こうしてサフィアちゃんにも聖水を見せる。

 おうちに帰ってコップを取ってきて、それに水を入れて祝福を唱える。


「聖属性は銀だが、これは金色に光るんだな」

「そうみたいだね。黄色だと土だけど、これは金色みたい」

「ふむ、綺麗だ。惚れてしまいそうなくらい」

「ふぇ」

「素晴らしいじゃないか、エミルちゃん」

「うへへ」


 しばらく二人で、金色の粒子が飛び交っているのを眺めた。

 サフィアちゃんの真剣で興味深そうに見開いた目もなんだかかわいい。


 サフィアちゃんの家で、お茶をごちそうになる。


「えっと何茶なんだっけ?」

「うちはタンポポ茶だな」

「ふぅーん」


 やっぱりいろいろなお茶があるんだね。

 ハーブではないけれど、タンポポ茶、ジャガイモ茶とかもあるんだって。


 そういえばお茶屋さんにも隣のコーナーに並んでいたような気がする。

 そっちは見ないでスルーしてたわ。


 タンポポ茶もこれはこれで美味しい。

 ってあって少し香ばし風味がする。


「このタンポポ茶は自家製なの?」

「うん。空き地とか草原の入口でも生えてるから、ひとりで採ってきても大丈夫なのだ」

「なるほど、たくましい」

「だろ」


 サフィアちゃんには離れたお兄さんがいて、その人の口調に影響されている。

 それでちょっと男の子みたいにぶっきら棒なのだけど、本当は優しい子だ。


「今度、一緒に取りに行くか?」

「うんっ、ありがとう」

「お、おう、じゃあまた今度だな。仕事は3時ごろには終わるか?」

「そうだね。毎日それくらいかな」


 私とお母さんの薬草採りは朝の9時くらいから始めて、お昼を挟んで3時くらいには終わらせて家に戻ってくる。

 そのあと、おじいちゃんのところに行ったり、たまにこうしてサフィアちゃんと遊んだりする。


 サフィアちゃん家はお父さんがいて、仕事をしているので、彼女は遊びまくっていても大丈夫なんだって。

 何かの仕事の手伝いをしていることもある。

 多いのは火魔法の練習なので、こうして私と同じように使えるのだ。


 8歳の誕生日は来月だったと思う。


「来月の誕生日楽しみだね」

「おお、さっきも言ったけど、火以外にもほしいな」

「そうだよね」

「水がきつい。すぐ魔力を持ってかれる」

「そうなんだよね、ちょっと残念だね」

「おう、でもまあ、他の風とか使えるかもしれないし」

「そうだね」

「ほら、風よ」


 ビュッと軽い風が吹く。


「どう? 効率とか」

「悪くはないが、うん。それほどでもないな」

「そかそか、4くらいかな」

「かもしれん」


 サフィアちゃんも水を出すことは可能だけど、適性が低いために、魔力を大量に消費してしまい変換効率がとても悪いので、普段は使わない。

 砂漠地帯に飛ばされて、水がないとかならともかく、水の適性は1と2の間くらいだろう。

 それでも全く使えない人より役には立つので、えらいのだ。


「まあ水が欲しけりゃエミルに頼むからいいよ、な?」

「うんっ、まかせて」

「頼りにしてる、相棒」

「えへへ」


 まあ、こんな感じでたまに遊んだりおしゃべりしたりする。

 サフィアちゃんは私には欠かせないお友達なのです。

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