インタビュー・ウィズ・ザ・カウント －俳優と伯爵－

第1話 筋書

　北の小国に、一人の天才科学者がいた。

　彼の革新的な発明は、実用化されればエネルギーの大量生産を通じ国民の暮らしを豊かにできるものであった。

　しかし、大量破壊兵器にも転用しうるその発明の理論を記した未公開の論文を、独裁体制を敷く隣国と通じた科学者の助手が盗み出し、科学者の妻と駆け落ちする形で隣国に向けて逃亡してしまう。

　科学者は論文を取り戻すべく、勇敢な警察官と手を組んで、国の北部にある未開の地へと踏み出すのであった……。

……という筋書きで、私はヒロインの先住民族の族長の娘を演じることになっていた。舞台となる北の小国での撮影は、私に関しては順調に進んでいる。

　ただ、警察官の一人を演じる俳優が、ちょっとした騒動を起こしつつあった。彼はこの国のとある伯爵令嬢と恋仲になり、その家族に結婚の許可を得ようとしているのだ。

　監督も共演者も面白半分で見守るばかりで止めはしないけれど、彼は一体どうなるのだろうか。