第16話 次なる任務へ

 振り返りのミーティングが終わった四人は、家に戻りそれぞれの自室に入って行った。片付けきれていない部屋で、辰真たつまはベッドへと転がり込む。

 妖魔憑きとなった青年、魅使榛登みのつかはるとはトクタイで検査と治療を受ける事になった。なんでも、憑りついていた『爆炎の妖魔』の思念が想定よりも強かったらしく、後遺症が残る可能性もあるからだと和沙かずさから聞いた。


(……妖魔ようまとの、関係……か)


 自分達がかなり特殊なのだと、頭では理解していても……。そんな想いを抱きながら、辰真たつまは息を静かにいた。


 ****


 トクタイ本部近くの某屋上にて。

 赤い長髪を揺らしながら、青年は呟いた。


「……今度こそ、全ての妖魔ようまを終わらせる……必ずな……」


 彼はバタフライソードの片方を天へと掲げる。……誰かに誓うように。


 ****


 翌々日。束の間の休日を過ごしたEチームの四人は、待機室に集合していた。次の任務の指示を受けるためだ。


「はぁぁ……。もう少し、休ませてくれたっていいじゃないかぁ~」


「まぁまぁしずなん。ゆっくりできる時間があっただけよかったじゃない? それにほら、ウチらこの間の任務じゃほとんど活躍できてなかったわけだしね~。次こそ、がんばろ?」


「ぐはっ! それを言うのかい!? 追い打ち!!」


 愚痴る志修那しずなに対し、無自覚に心をえぐる発言をする楓加ふうか。そんな二人のやりとりを見つめていた操姫刃ときはが、辰真たつまに向かって静かに声をかけてきた。


辰真たつま、調子はどうだ?」


「えっ?」


 突然かれて驚く辰真たつまに対し、彼女は何気ないと言った様子で告げる。


「お前、顔色悪いぞ? 不眠か?」


 図星を突かれた辰真たつまは何も言い返せなかった。確かに、最近眠れていない。だが、それは……。

 どう答えようか迷っていると、司令室から和沙かずさが現れた。全員が自然と静かになる。


「皆、集まったようね? では、新たな任務について話す。資料を回すから、各自で目を通して?」


 渡された資料を回していく。最後に受け取った辰真たつまは、資料を見て思わず目を丸くし呟いた。


「……神の、……?」


 そこに記されていたのは、川の主であった水神が工事により暴走し、水害を起こしているとのことだった。具体的な被害で言うと、川の氾濫に雨が止まない……など。

 一般人からすれば、ただの災害にしか見えない事柄だ。


「ほえ~! 一見したら神の仕業だなんて思わないかも~。これって、工事に怒っているんだよね?」


 楓加ふうかの言葉に和沙かずさが静かに頷き、口を開いた。


「そう。なんでもこの工事は、川の埋め立てみたいなの。それも、どうやらでの……ね? 今時にそんなことがまかり通るのも、おかしな話なのだけれど……」


 呆れたようにため息をきながら、和沙かずさが続ける。


「要約するとね? 正しい手順を行わなかったために、水神を怒らせたというのが今回の話。それで、任務内容としては、現地に行っての現状把握と水神の。そして……水害を止める事よ。よろしく」


(ん? 水神の……保護? 確かに、トクタイは妖魔ようまをただ倒すだけの組織じゃないとは聞いているけれど……神を保護して……どうするんだ?)


 疑問を口に出すかどうか悩んで……辰真たつまはやめた。気がとがめたのだ。


(俺なんかが、口出しするようなことじゃ、ないしな……)


「誰か疑問はある? ない? なら、早速だけれど行ってきて?」


 四人は「了解」と答えると、待機室から出て駐車場へと向かって行く。それを見送ると、和沙かずさは静かに呟いた。


「無事に遂行できるといいのだけれどね……?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る